「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

思わずがんばれと言いたくなるほど感動的な行為だ。

そして、入口のバネを30度ほど押し上げて初めて外から触れられる場所に付いていた血痕は、中の個体が出ようとしてバネを30度ほど押し上げていた時、そばから離れられないでいる外の個体が血の付いた鼻を押し当てた結果だ。

 

もう少しで出られるはずなのに外から押し返して邪魔をする奴がいる。この意味のない、出ようとしてもがいている仲間の行動を単に邪魔をするだけの行為も、もし、傍で観察することができたとしたら、思わずがんばれと言いたくなるほど感動的な行為だ。

 

捕獲具内外に付いた血痕の多さから、救出するのに最も多く時間がかかったと思われた。おそらく、最もひどい音がした深夜1時頃の20~30分間がこの時間帯だったと思われる。これでは、下にいる人たちが安眠できる訳がない。

 

前にも「うわ! でかい!」と驚くような個体を捕獲したことがあるが、厚さ0.5mmの金属を曲げて押し上げることができる最後まで残った大物はこの家族の父親だったのだろうか? もし、そうだとすると、父親が捕まっているのを、時間をかけて救出しようとする家族が外に複数匹いたことになる。

 

観察結果から深夜に行われた大騒ぎの顛末を推理してみた。実際、どのような行動が行われていたか不明だが、少なくとも、捕獲具の中には血を流してまで外に出たいと努力する個体がいて、外には途中であきらめずに、やはり同じように血を流してでも助けたいとおろおろする個体がいたことは間違いない。

 

中の個体は外の個体にとって、とても重要な存在だから途中で救出作業をあきらめる訳にはいかなかったのだろう。それぞれの個体間に強い絆があると考えるほかない。

 

後日確認すると、それ以来ネズミはいなくなったそうである。こんな危険な場所は寝床として相応しくないと判断し、口元の腫れあがった親が同じく口元を腫らした子たちを連れて一斉に出て行ったと考えられないだろうか。

 

続く…

 

本記事は連載『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』を再編集したものです。

 

 

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捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

山﨑 收一

幻冬舎メディアコンサルティング

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