「駆除すべき対象としてしか見ていなかった生き物に対して、ネズミさんたちと呼びたくなるほどに親しみを感じている」「解き明かして得たネズミさんたちの習性が、今後のドブネズミ駆除に役立つのであれば、私にとってこれ以上喜ばしいことはない」――ネズミ捕獲のプロ・山﨑收一氏は書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎MC)で、そう語っています。

大興奮「まさかネズミがこんなことを…?」驚愕の事実

左上の個体と右下の個体は口元を怪我して血を流していた。特に、右下の個体は怪我をした後に相当暴れまわっていたことが、あちこちに付いた血痕から想像できる(写真8)。

 

[写真8]あちこちに血痕が付いているため、相当暴れたと思われる個体

 

そして、口から血を流してまで、中の個体を助けようとしていた個体がこの捕獲具の外にいた事になる。外側に血が付いていた左上、中上の捕獲具は両方とも上の段にある。口元を怪我した個体が登って捕獲具にしがみつき、脱出の手助けをしていたことが分かり、驚くほかない。

 

見事にすべての個体が揃って脱出した状況をどう解釈すれば良いのであろうか。それぞれの個体が単独で行動しているのならこのようなことは起きない。捕まった個体のうちの1匹が運よく脱出できたとしても、一刻も早くこの危険な場所を離れようとするはずである。口元から血を流してまでその場に居続け、仲間を助けようとしたのだ。

 

ネズミがこのような行動を行っていることを誰が信じるだろうか。私はとても興奮し、できるだけ多くのことを記録しようと沢山の写真を残した。

 

今もその多くの写真を元に、脱出方法を知るための手掛かりを探している。どのようにして出ることができたのか。そして、外にいる個体はどのように怪我をして出血したのか。

 

外からしか触れられないところに血痕がついていなければ、単に脱走した失敗例としてしか処理されなかったは ずである。

 

私はこの時にどんなことが行われていたのかを推理してみた。

次ページ脱出することを早々にあきらめた。そして…
捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

捕獲具開発と驚くべきネズミの習性

山﨑 收一

幻冬舎メディアコンサルティング

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