資産家一族の長として采配を振るっていた母、結婚以来ずっと身の置き所がなかった父。母が亡くなり、相続が発生しますが、子どもたちは父と折り合いが悪く、話し合いを持つことすらできません。父が母の遺産を好き勝手にするのではと、子どもたちは気が気ではありませんが、納税期限は刻々と迫ってきます。みんなが納得する着地点は探せるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

家庭裁判所の申し立てを取り下げ

こうして父と子どもたちの双方を説得し、互いに歩み寄れる部分を見つけられたことから、遺産分割協議ができるめどが立ちました。松下さんには家庭裁判所の調停申し立てを取り下げてもらい、申告期限の間際に遺産分割協議を完成させることができ、相続税を節税しながら、申告を済ませることができました。子どもには相続税がかかったものの、相続財産の預金の一部で支払うことができ、十分に現金も残すことができました。

 

 

今回の件で、ポイントとなった点をまとめます。

 

★相続人が信頼する人から協力を得る

話し合いができる状況を作るには、まず入り口として、相続人が話を受け入れてくれる人を捜し、力を借りること。今回は父親の実弟が該当。

 

★相続に慣れた第三者が調整に入る

相続人間の関係がこじれている場合は、相互を説得できる専門家がいたほうが話し合いが早く進みやすい。

 

★未分割申告の不利益を説明

膠着状態を放置しても、デメリットしかない。遺産分割協議がまとまらずに申告期限が来た場合、申告を二度しなくてはならないことを説明するとともに、余分な費用がかかることを説得材料とした。

 

★家庭裁判所の申し立ては取り下げる

家庭裁判所に申し立てしても、結局は相続人の話し合いでしか解決できない状況だった。今回は話し合いが成立したため不要に。

 

★申告期限までに遺産分割協議する

遺産分割協議がまとまらずに身内で裁判をしても、失うものは大きい。そのため「申告期限前までに決着をつける」と目標を定め、話し合いを進めることが大切。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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