シニア婚の夫婦、これから幸せな老後を送るはずが…
今回の相談者は、60代の北野さんです。夫が急な病に倒れ亡くなったのですが、その後、子どもたちとの関係がこじれてしまったとのことです。相続の着地を探るため、筆者のもとに相談へ見えました。
北野さんの夫は地方公務員で、定年まで真面目に勤務しつつ、老後を見据えて貯金にもいそしんでおり、それなりの資産を持っていました。じつは北野さんは後妻で、先妻が3人の子どもを残して亡くなったあとに夫と結婚しました。結婚した当時は40代でしたが、それまでは一般企業に勤めるキャリアウーマンで、たまたま参加した仕事つながりの会合で知人に紹介され、その後も何度か複数人で顔を合わせるうち、親しくなったとのことです。結婚後も勤務を続け、数年前に退職。定年延長は選択しませんでした。
北野さんと夫はひと回り以上の年齢差がありました。結婚当初、3人の子どものうち、長女と次女はすでに結婚して独立しており、社会人2年目の長男は、同じ敷地内の別棟に暮らしていました。子どもたちの状況はいまも変わりませんが、結婚当初から夫が亡くなるまで家族の関係は悪くなく、適度な交流もあり、問題は感じなかったといいます。
夫の死は突然の出来事でした。持病もなく健康だったのですが、日課にしている朝の散歩の途中で脳梗塞を起こし、病院に搬送されたのです。残念なことに、看護の甲斐なく意識が戻らないまま亡くなりました。
被相続人:夫(無職・先妻は故人)
相続人 妻(無職・後妻、相談者)
長女(先妻の子、結婚後独立)
次女(先妻の子、結婚後独立)
長男(先妻の子、未婚、自宅の別棟に居住)
資産状況:自宅土地、自宅建物、預貯金
「預金を下ろした」のひと言で崩れた信頼関係
夫の葬儀は、北野さんが喪主となって滞りなく終わらせることができましたが、四十九日の法要の席で、次女から遺産分割の話が出たときに行き違いが生じました。
夫が亡くなったあとはさまざまな費用が発生するため、北野さんは夫名義の預金の一部を下ろし、使い勝手のいい自分の口座へと移動していました。話の流れでそのことを話すと、子どもたちは「自分たちに断りもなく勝手なことをした」「財産を隠すつもりか」と、激しい剣幕で怒りだしました。
これまで言い争いやけんかをしたことは一度もなく、義理の関係ながらもそれなりに面倒を見てきたつもりだったのですが、あまりの豹変ぶりに北野さんは言葉を失いました。その後、日をまたいで何度か同じようなやり取りがあり、いままでの信頼関係はすっかり崩れてしまったといいます。双方の感情がこじれ、冷静な話し合いができない状態にまで悪化してしまったのです。
「夫婦ならお財布も一緒」という考え方がアダに…
「長男が暮らしている別棟は、彼が社会人になったときに、当時存命だった祖父が建ててあげたものだそうで、長男名義なのです。私たち夫婦が暮らした家は、結婚して半年後に、これまでの古い建物を撤去して新築しました。費用は夫婦で半分ずつ負担しました。細かいところまで私のこだわりがつまっていて、とても愛着のある家です」
北野さんは半額を自分の貯金から支払いましたが、夫は住宅金融公庫から借入しました。本当なら、家の半分を自分名義で登記しておくべきだったのですが、当時はそこまで気が回らず、そのまま年月が過ぎてしまいました。しかも、義理の子どもたちは北野さんが半分お金を出したことを知りません。そのため、いまさらどんな説明したところでわかってもらえないという、あきらめの気持ちもあります。
もっと悪いことに、夫婦の財産は一緒という考えがあったため、夫の口座に自分の預貯金をかなり移動させており、いまとなってはそれも相続財産として計上されてしまっています。
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