「1年分の料金」を事前に受け取るため、C/Sが黒字に
「上場って、儲かっている会社がするものではないか?」と思われる方もいるかもしれませんが、赤字の状態で上場する会社も少なくありません。
実際、今回取り上げたSansanは、営業利益ベースでは赤字上場でした。また、選択肢②の「スペースマーケット」もSansanと同じ2019年に上場していますが、営業損失が載っています。
Sansanは、多額の広告宣伝費をかけており(図表3)、シェア拡大のための先行投資が読み取れます(部下と取引先とのつながりを知らなかった上司が「それ、早く言ってよ~」と言うCMに聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか)。
選択肢①と②を見比べたときに「矢印の向き」で明らかに違いはあるのは、「営業活動から現金をどれだけ生み出したか」が表示される営業C/Fです(図表2)。
P/Lが赤字なら、C/Sも赤字になることが多い一方、この選択肢①は営業C/Fが上向きの青色矢印になっていて、プラスなのです。
これはSansanの料金回収のタイミングに理由があります(図表4)。企業向けが9割以上の売上を占めるSansanは、料金は1年分の前払いが基本となっています。
これは、実際にSansanの貸借対照表を見たとき、財務数値上どのように反映されるかというと、貸借対照表の流動負債に「前受金」という科目で表示されます(図表5)。