時間が経つにつれ「事前に受け取ったお金」が売上高に
前受金って何? 売上と違うの?という方もいるかもしれませんので、簡単に補足をしておきます。
まず契約のタイミングで現金を1年分受領します。このタイミングでは売上高に計上されないため、損益計算書へのインパクトはありません。
この後、時間が経つにつれて貸借対照表の「前受金」が、損益計算書の「売上高」に変わっていくという流れです(図表6)。
この強力な契約形態により、Sansanの貸借対照表は現金と前受金が大部分を占めています。サービスの提供前に1年分の現金が前もってもらえると強いですね。
メルカリにしろ、マクアケにしろ、近年話題になる有力ベンチャー企業の多くは、サービス提供前に現金が入る仕組みを作っていることが多いです。これは企業の成長段階で資金ショートしないためという理由も大きいでしょう。
さて、それではこの現金の動き、キャッシュ・フロー計算書ではどのように反映されるのでしょうか。Sansanのキャッシュ・フロー計算書を見てみましょう(図表7)。
キャッシュ・フロー計算書の構成は、一番上に損益計算書の「税引前当期純利益(損失)」から始まり、その下から現金の増減項目を調整して営業活動のC/Fを算出する方法が多いです(初心者の方がつまずきやすいのはこの辺りでしょう)。
たとえば、減価償却費。損益計算書上は費用になりますが、実際に現金は流出しない費用項目です。つまり現金が流出しないため、キャッシュ・フロー計算書で表示される際は「プラス」の項目として表示されます。ここが利益の動きと現金の動きの大きな違いです。
前受金で現金調整され、営業C/Fが一気に黒字転換
話を戻してSansanのキャッシュ・フロー計算書を見ていきます(図表8)。まず、先頭は損益計算書の税引前当期純損失からスタートです(赤字上場のため先頭からマイナススタートです)。
その後、色々調整が入るのですが、多額の調整が入ります。これが上述した前受金の動きの調整です。まだ売上になっていないため損益計算書には反映されませんが、現金として受け取っているのでキャッシュ・フロー計算書には反映されます。
この大きな影響を考慮すると、営業活動のC/Fは一気に黒字転換します。これは非常に大きなSansanの強みです。
一方、スペースマーケットのキャッシュ・フロー計算書がどうなっているかというと、こちらもスタートはSansanと同様赤字スタートですが、現金調整も、特に大きな影響のある調整はありません。そのため、そのまま営業活動のキャッシュ・フローは赤字の状態です(図表9)。
つまり、同じ赤字上場の2社ですが、契約形態の差により営業活動のC/Fは異なる動きをするということが見抜ければ、選択肢①がSansanであると見抜けるのです。
(※本記事に掲載の情報は特段の注や付記がある場合を除き、2019年12月書籍執筆時点での各社決算書情報を参照しています。)
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