40代になってから、年の離れた男性と家庭を持つことになった会社員女性。落ち着いた幸せな毎日を送っていましたが、ある日夫が急死してしまいます。法要の席で、預貯金についての軽いひと言がきっかけで、「財産を隠す気か!」と継子たちの態度が豹変。相続トラブルへと発展し、話し合いもできない状況になってしまいます。双方が納得できる着地点はどこなのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
「父の財産は子どものもの、後妻には渡したくない」
先妻の子どもたちにすれば、北野さんは母親が亡くなったあと、いつの間にか家に入りこんできた人という認識です。筆者を交えた話し合いの席では、父親の財産はもともと父親のもので、北野さんには権利はないのではないかという主張まで飛び出しました。
話を聞くうちに、先妻の子どもたちは北野さんを父親のパートナーと認識しているにすぎず、母親としては受け入れていないこと、そのため、父親の財産を分けることに強い抵抗感を感じていることが明らかになりました。北野さんも子どもたちとは養子縁組を行っていません。
しかし、北野さんへの子どもたちの心情はともかく、北野さんは正式に籍を入れた配偶者です。配偶者の法定相続割合は2分の1。亡くなったときに配偶者であれば、財産を築いたいきさつはどうであれ、配偶者としての権利は法律で守られています。これについて筆者から3人の子どもたちに説明したところ「ならば仕方ない」と納得したようでした。
実家を離れた娘2人は資産状況に「疑心暗鬼」
嫁いだ2人の娘たちはとくに、実家の資産状況がわからないため、疑心暗鬼になっている様子が見て取れました。不動産は父親が暮らしていた土地・建物であることは明らかですが、子どもたちが気にしているのは預貯金のことです。ざっと確認しただけでも申告の必要性があるのは明らかで、改めて財産のすべてを確認し、評価をしなければなりません。
たいていの相続争いは、一部の相続人が財産を隠すことが原因で発生します。しかし、そのような行為をすれば、法的な問題が発生するだけでなく、人間関係までも修復不能な亀裂が生じてしまいます。子どもたちにもそう説明したあと、すべての資産をまとめた説明資料を渡しました。分割の基本を法定割合とし、それぞれの割合を確保した分割案です。
北野家の財産は、預金と不動産がほぼ半分ずつでした。北野さんと先妻の子どもたちとは養子縁組をしていないため、実子がいない北野さんが亡くなれば、財産を相続するのは北野さんのきょうだい(姉と弟)になります。子どもたちも北野さんの財産をもらう権利がないことは理解しており、なおさら今回できるだけ多く相続しておきたいというのが本音のようです。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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