40代になってから、年の離れた男性と家庭を持つことになった会社員女性。落ち着いた幸せな毎日を送っていましたが、ある日夫が急死してしまいます。法要の席で、預貯金についての軽いひと言がきっかけで、「財産を隠す気か!」と継子たちの態度が豹変。相続トラブルへと発展し、話し合いもできない状況になってしまいます。双方が納得できる着地点はどこなのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

「後妻が家を出る」という提案

北野家の自宅敷地は70坪近くと広めですが、奥に深い形状です。現在は同じ敷地の奥の建物に北野さんが住み、手前に長男が住んでいます。夫と一緒に建て、その後ずっと暮らした家ですから愛着はありますが、長男が住んでいる家もあるので、不動産のすべてを北野さんの名義にするわけにはいきません。また、土地の形状から二つに分筆するには無理があります。かといって、共有すれば後の相続が大変になります。

 

 

こうした事情を考慮のうえ、いくつかの遺産分割案を立ててみましたが、不動産と現金の両方をそれぞれに分けることはむずかしいと判断しました。しかし、北野さんが不動産を相続すると、先妻の子どもたちが納得しないだろうと思われました。

 

そこで、不動産は先妻の子どもに譲り、北野さんは現金だけを相続することを提案しました。今後は別々に生活したほうが無理がないと考えられたため、家がある長男が不動産を相続し、ほかの相続人は現金とするプランを提案したところ、全員の理解を得ることができました。

 

その後、遺産分割協議書の調印も無事に終わり、それぞれの財産を分けたあと、北野さんは相続した現金に手を付けないまま、賃貸マンションへと引っ越しをすませました。買い物に便利な場所でペットも飼える物件のため、いままでより快適になったと喜んでいます。

 

今回の問題解決のポイントとなった点をまとめました。

 

●不動産は共有しない

相談者の女性は先妻の子どもたちと養子縁組していないため、次回相続が発生すれば、再び問題の火種となる可能性が高い。共有は避け、別のやり方を探ったほうが得策。

 

●不動産は分けない

敷地の形状の問題もあったが、「父親の土地」と認識している先妻の子どもの意向を汲んだ遺産分割を行うことで、争いの原因を残さないようにする。

 

●家にこだわらず、現金を相続しておく

住んでいる家に固執しなければ、相続人間のトラブルのリスクも減らせるうえ、現金を受け取るという選択肢も出てくる。

 

●相続を機に生活を変える

相続を機にいままでの生活を変えることで、これからの人生をより快適に過ごせる環境を作れる。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子

株式会社夢相続代表取締役

公認不動産コンサルティングマスター

相続対策専門士

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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