コロナ禍にあっても、粘り強い対応を続けて感染者の抑制に努めているベトナム。他国同様、経済にダメージを受けていますが、不動産市場は活況で価格上昇も続いています。しかし、外国人の立場での不動産投資となると、事情は大きく異なります。いま静観すべき理由と、今後の狙い目となる不動産の条件について取り上げます。現地で不動産ビジネスを展開する筆者が、ベトナムにおける不動産投資の注意点を解説します。

引き続きポテンシャルの高いベトナム不動産だが…

早いもので、2020年もあとわずかとなりました。今年は新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックの発生で、世界中の国々が大変な経済損失を被りました。ベトナム不動産市場も例外ではなく、コロナ禍による影響は深刻です。今回は、今年最後の記事として、ベトナムの不動産市況を総括するとともに、現地目線で実情を解説していきたいと思います。

 

コロナ禍の影響で、ベトナムでは未だに外国人の入国制限が続いており、外国人向けの不動産販売や賃貸は低調です。とはいえ、ワクチン開発や接種の開始といった希望の持てるニュースも増えており、ベトナムでもコロナ禍の収束を見据え、引き続き不動産投資のポテンシャルは高いといえます。

 

しかし、ベトナムで不動産事業を行っている立場として非常にいいにくいのですが、このままの状態が続くようであれば、外国人投資家には向かない市場へとなっていくでしょう。ベトナム全体における外国人の不動産投資についていえることですが、ここでは筆者が事業拠点としている、ホーチミン市の傾向も踏まえながら解説していきます。

 

(※ハノイの鉄道橋/PIXTA)
(※ベトナムの鉄道橋/PIXTA)

「法的な縛り」と「価格の急上昇」に細心の注意を

これまで外国人投資家が恩恵を受けたのは、2015年7月からの外国人購入開始時期に購入した方々、そして現在インフラ整備中のMETRO(都市鉄道)駅周辺物件を適正価格で購入された方々だといえます。

 

しかし、長年ホーチミンをはじめとするベトナムの不動産を扱っている筆者が、不動産市場のポテンシャルは感じつつも、外国人投資家はこのタイミングで動くべきではないと考える理由を、大きく3つにまとめます。

 

①「外国人は土地及び土地付き戸建ての使用権が購入できない」という前提がある

 

そもそもの条件として、ベトナムでは、土地は国の所有物です。しかし、ベトナム人やベトナム企業であれば、条件はあるものの、土地に関しては永久使用権があり、資産として代々残せるメリットがあります(2親等までは相続税はなし)。

 

そのため、ベトナム人にとっては土地の使用権は金(ゴールド)を含め、後世に残せる重要な資産として位置付けられており、ベトナムでの個人投資の41%(ベトナム総合情報サイトVIETJO『【第33回】ベトナム市場における不動産投資のポテンシャル【未来を創るベトナムビジネス】』2020年12月9日記事、「ベトナムにおける投資トレンド・法規制」参照)が戸建、土地関連となっているように、コロナ禍でも活発に取引されています。しかし、この市場に外国人は参入できません。この点は非常に残念です(一部条件により例外はあります)。外国人の立場で無理に参入したとしても、得られるうまみが少ないどころか、資産になりにくい物件を掴むなど、リスクを背負い込みかねません。

 

②外国人が投資できるマンションにも制限がある

 

マンションについても、上記①同様に外国人の購入に制限があり、外国人への販売を許可された物件しか購入できません。開発プロジェクト内の棟のうち、外国人が購入できるのは30%だけと法律で定められています。

 

また、上記の「VIETJO」の記事内にもありますが、現在は中級のマンションの売り出しが多くなっています。その理由として、販売価格が高騰してきたなかで「ラグジュアリー」や「高級」を購入できるベトナム人が限られていることと、購入できる外国人投資家の制限を30%に抑えていることで、自ずとラグジュアリーや高級マンションを売却するのが難しい状況になっていることがあり、外国人が購入してもほかのベトナム人向け物件の買い手が付かず、マンション全体としての価値が下がる可能性も考えられます。

 

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