「セクハラ」といえば、女性が被害者になるイメージが強いようです。しかし実際は性別を問わず問題となっており、特に職場では被害が多発しています。どのような言動が該当し、どのような犯罪とみなされるのか。被害に遭ったとき、どうすればよいのか。法的観点に基づいて弁護士が解説します。※本連載は、上谷さくら氏の著書『おとめ六法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。本連載に掲載する民法は2020年4月施行の改正民法の内容、そのほかの法令は2020年3月時点の内容に基づきます。

上司や取引先…「断りにくい関係」で起きるセクハラ

職場でのセクハラは、上司や取引先など、立場上断りにくい関係が利用されがちです。解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外などの不利益を受けるのではないかとのおそれから、拒否や抵抗がしにくいのです。

 

Q1.「仕事の取引先から呼び出されて行くと、最初は仕事の話をしていたのが、しだいに身体にさわりはじめた。『やめてください』と言うと『うちとの取引がなくなったら困るだろう?』と、関係を持つようほのめかされた。」

 

⇒取引先のこのような要求に応じる必要はありません。この場合は取引先との関係でありますが、男女雇用機会均等法の「職場」と考えられます。また刑法の強制わいせつ罪、強要罪、迷惑防止条例違反などにもあたる可能性があります。自分の会社に相談しても「取引先なので我慢して」などと言われ、まともに対応してもらえない場合は、弁護士などの専門家に相談してみましょう。

 

Q2.「深夜、会社で残業中、上司に強引にキスをされたり、胸をさわられたり、強引に性的関係を持たされたりした。」

 

⇒このような場合は、強制わいせつ罪、強制性交等罪にあたります。十分な証拠があれば、刑事告訴も検討できるため、弁護士に相談しましょう。

「望んでいない」という意思をはっきりと表示

セクハラを嫌がる気持ちを隠して笑顔で対応していると、相手が「受け入れてもらえている」と勘違いをして、行為がエスカレートする危険もあります。このような対応は「合意していたと思っていた」と相手が主張する余地を与えてしまうため、裁判などで不利に働く要因にもなりかねません。

 

●ほかの誰にも知られない方法で、セクハラ行為をしている当の本人に「それはセクハラなのでやめてください」とはっきり伝える

●信頼できるほかの社員・上司に相談して、やめるよう伝えてもらう

●社内に設置されている相談窓口に相談する

●外部の相談機関に相談する

 

このような対応で、嫌がっているという意思表示をしましょう。

 

会社に相談し、調査の結果セクハラがあったと判断された場合、加害者がなんらかの処分を受ける可能性があります。ただし、相手を解雇するかは会社の判断によります。

 

社長のように、社内で大きな権限を持つ人が加害者の場合、会社の相談窓口や人事部に相談しても、見て見ぬふりをされてしまうこともあるのが現状です。そのような場合は、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

 

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おとめ六法

おとめ六法

著者:上谷 さくら

著者:岸本 学

イラスト:Caho

KADOKAWA

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