「親が認知症で要介護」という境遇の人は今後、確実に増加していくでしょう。そして、介護には大変、悲惨、重労働といった側面があることも事実です。しかし、介護は決して辛いだけのものではなく、自分の捉え方次第で面白くもできるという。「見つめて」「ひらめき」「楽しむ」介護の実践記録をお届けします。本連載は黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)から一部を抜粋、編集した原稿です。

じーじはひと眠りで昼夜逆転してしまった

夜の7時の夜明け前

 

デイサービスから帰って来たじーじは、どんなにお天道様が真上にあっても必ずパジャマに着替える。一時着替える方法がわからなくなり、洋服の上にパジャマを着ていたことを思えば、一人で着替えられるようになったからすごいので、そこは気にしない。

 

黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)
黒川玲子著『認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌』(海竜社)

しかし、事件はこのあと起こった! パジャマに着替えてベッドですっかり爆睡していたじーじ。私が2階から降りてきたら

 

「おはよう」
「こんばんはだよ」
「何を言っているんだ、おはようだ!」

 

……そういえば、さっき見たときはパジャマだったのに、洋服に着替えているではないか!

 

「お前、今日は寝坊したのか? 起きてくるのが遅いぞ」と、かなりご立腹。

 

「今は、夜の7時だよ」
「そんなことはない、お前は相変わらずおかしなことを言うな」

 

雨戸をあけて暗くなった外を見せて、「夜だから暗いでしょ?」というと、なんと「夜明け前だ!」とじーじ。思わず「島崎藤村か!」と突っ込みたくなったが、テレビをつけて見せた。

 

「ほら夜のニュースでしょ」
「これは、おはよう日本だな。だから朝だと言っているだろう」

 

と、がんとして「朝」だと言って譲らない。おまけに、どんどん表情が険しくなり、このままだと、また、認知星人暴れん坊将軍バージョンに変身しかねない!

 

……そこで、ピカッとひらめいた!

 

「ご飯ができたから食べよう」と言って、ダイニングへ誘導。じーじは毎晩1缶ビールを飲むのが楽しみなので、ビールを献上。ビールを見たじーじは、「お! 今日は、朝からビールか、そうか、今日は正月だったな。それにしては、ちょっと地味な料理だなあ……」などと言いながら、ビールをゴクリ。

 

そのうちに表情も穏やかになり、地球人に戻ったじーじは、何事もなかったように、「お! 今日はツルカメの日だから、早くご飯を食べてしまおう」と一言。ちなみに、ツルカメとはじーじが勝手につけた名前で、正式には「鶴瓶の家族に乾杯」という番組である。

 

今日もわが家は、ビールの存在に助けられたのであった。ビールの神様ありがとう。

 

黒川 玲子
医療福祉接遇インストラクター
東京都福祉サービス評価推進機構評価者

 

 

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認知星人じーじ「楽しむ介護」実践日誌

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黒川 玲子

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