じーじは大のショートステイ嫌い
ショートステイには憲兵がいる
在宅介護での困りごとの一つが、夜の外出。幸いわが家には、準夜勤ちゃん(私の娘)がいるので、予定を合わせてどうにかやりくりをしているが、そうそう準夜勤ちゃんにお願いするわけにもいかない。なのでここ数年、外でお酒を飲む機会がめっきり減ってしまって悲しい。
じーじが元気だった頃は、週2回以上のペースで、夜な夜な大宮界隈で大酒をくらい、へべれけになっていた。この頃が懐かしい。夜の外出はまあともかく、最も困るのが、泊まりでどこかに行けないこと。そんな時にはショートステイ*を利用するのだが……。
じーじは大のショートステイ嫌い。ショートステイの日が近づくと必ず面白いことを言い出す。
「お前は知らないだろうが、あそこには、憲兵がいてな、入るなり身ぐるみをはがされて、囚人服に着替えさせられるんだぞ。おまけに、バッグは接収されるんだ」
まあ、着替えが入っているバッグのチェックはするけど、身ぐるみまでははがされないだろう、と思いつつ話を聞いていると。
「おまけにな、夜な夜な、職員がきて、電気の工事をお願いしますって、言うもんだから、俺は眠れないんだ」
「じゃあ、夜に電気工事を頼まないでくださいねって言うからね」
「無駄だ。いいか、あそこは治外法権なんだ。誰がなんと言ってもどうにもならんのだ。収容所だからな」
治外法権だの収容所だの、ありとあらゆる難癖をつけては行きたくないことをアピールする。
まあ、毎回のことなのでやり過ごしていたが、今回はすごかった。当日の朝、ちっとも起きてこない。やっと起きたと思いきや、トイレから出てこない。心配になって声をかけてみると、
「便所ぐらい、好きに入らせろ!」と。ご機嫌ナナメ。
お迎えがくるまでの間、憲兵だの収容所だの文句を言っていたくせに、ピンポ~ンとチャイムがなり玄関が開いた途端に「お! 今日は館長さん、じきじきのお迎えですか。こりゃあ、VIP待遇だなあ」だって!
恐るべし、外ヅラ良夫君なのであった。
ショートステイ
要介護者が短期間、施設に入所して食事、入浴、リハビリ、レクリエーションなどを受けられる介護サービスのこと