日本に住んでいるが、国籍は外国という「在日外国人」は300万人近くいます。もし相続が発生した場合、日本の法律に則って手続きは進めるものでしょうか。それとも外国の法律に則って進めるものでしょうか。相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士が在日韓国人を例に解説します。

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相続は「被相続人の国籍がある国の民法」に基づく

日本の在日外国人293万人以上のうち、44万人以上が在日韓国人です(2019年末時点)。日本人同様、在日韓国人の高齢化も進んでおり、韓国が関係する相続(在日韓国人の相続や財産が韓国に所在する相続等)が毎年一定数発生しています。一方で、日韓両国の相続実務に精通した専門家が少ない、また、韓国の相続法や相続税法に関する日本語の情報が圧倒的に少ないという実状があります。今回、韓国籍を持ったまま日本にお住まいだった在日韓国人の方が亡くなられた場合の、日本と韓国双方の相続税申告の仕組みについて説明します。

 

在日外国人は300万人弱…相続はどうなる?(画像はイメージです/PIXTA)
在日外国人は300万人弱…相続はどうなる?(画像はイメージです/PIXTA)

 

まず日本では、外国籍の方が亡くなられた場合には、被相続人の本国の相続法に基づいて相続手続を行うよう定められています。韓国の法律でも、被相続人の本国法によると定められているので、結果として、韓国籍の方が亡くなられた場合の相続手続は韓国の相続法が適用されることになります。

 

ただし日本でも韓国でも、民法上、被相続人が遺言を作成し、相続が起こった場合に適用する法律を「日本の法律」と定めていた場合には、日本の民法で手続を進めることができるという例外を定めています。

 

韓国と日本の相続法では、「相続人の範囲」や「法定相続分」が異なりますので手続に注意が必要です。

「韓国の民法」における「法定相続人と相続順位」

第1順位 直系卑属(子、孫またはひ孫など)
第2順位 直系尊属(親または祖父母など)
第3順位 兄弟姉妹
第4順位 四親等以内の傍系血族(おじ、おば、甥、姪、いとこなど)

 

配偶者は常に相続人になります。第1順位と第2順位と共同相続人となる場合は、その相続人と同順位で相続します。配偶者がいて、第1順位と第2順位の相続人がいない場合は、配偶者のみが相続人となります。従いまして、第3順位の親族が相続人となるのは、配偶者と第1~第2順位の相続人がいない場合のみ、第4順位の親族が相続人となるのは、配偶者と第1~第3順位の相続人がいない場合のみとなります。

 

日本では、配偶者と兄弟姉妹が共同相続人となる場合がありますので、この点が韓国との違いになります。

 

また、韓国では代襲相続人となるのは、直系卑属、兄弟姉妹の直系卑属(子どもに限られず、孫以降に下っていきます)、直系卑属の配偶者、兄弟姉妹の配偶者です。

次ページ日本における相続税申告、韓国における相続税申告

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