2019年、実に40年ぶりに改正となった相続法。これまで相続の現場で起きていた不都合を改善するための改正でしたが、すべてが完璧というわけにはいきません。そこには想定しておくべき、相続の落とし穴も……。相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の北川聡司税理士が解説します。

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遺留分制度の改正内容を確認

2018年7月に「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が成立し、残された配偶者が安心かつ安定した生活を過ごせるようにするために「配偶者居住権」が創設されたり、被相続人の介護や看病で貢献した親族は金銭要求が可能になったりなど、さまざまな改正がされました。

 

「遺留分制度」については2019年7月1日以降の相続から施行となりました。「遺留分」とは遺言があった場合に、一定範囲の相続人が被相続人の財産の一定割合を相続する権利のことです。原則、法定相続分のさらに1/2が遺留分として相続する権利があります。改正のポイントは以下の通りです。

 

① 遺留分を侵害された者は、遺贈や贈与を受けた者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができる

② 遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には、裁判所に対し、支払期限の猶予を求めることができる

 

ここで注目したいのは①の「遺留分相当額に相当する金銭」というところです。従来であれば、遺留分減殺請求権の行使により、すべての財産が共有状態になったのですが、それを回避することを目的として「金銭」で遺留分を支払うように改正されました。

父からの遺言…すべての財産を長男に相続する

しかしこの改正により、思わぬトラブルに見舞われるケースがあります。父が残した財産は「自宅や山林などの不動産」と「預貯金」であり、「すべての財産を長男に相続させる」……という内容の遺言書が残されていたケースを見てみましょう。

 

母はすでに亡くなっていたので、相続人は子どもである長男と二男の2人でした。

 

<父が残した遺産>
① 不動産 7,500万円
(内訳)
・ 自宅(父と長男が居住) 3,000万円
・ 貸宅地(多数) 1,500万円
・ 山林(市街化区域内) 3,000万円

② 預貯金 500万円
※ 不動産の金額は相続税評価額

<相続人>
・長男
・次男

 

相続税評価額ベースでは遺産総額は8,000万円であり、二男が有している遺留分相当額はその4分の1相当の2,000万円になります。二男から遺留分請求をされたため、長男は「金銭」で2,000万円を支払わなければなりません。

 

一方、預貯金は500万円しか残されておらず、差額1,500万円は不動産を処分して捻出しなければいけない状況でした。

 

これでは払えん…(※写真はイメージです/PIXTA)
これでは払えん…(※写真はイメージです/PIXTA)

 

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