電話のあと、舅は激怒。言い分を聞いてみると…
「変わりました。お待たせして申し訳ありません。お世話になっております。はい。そうですか、わざわざありがとうございました」と、軽く会釈をして電話を切った。通話時間はとても短かった。
先ほど、豆腐の切り方を指摘した舅と、今受話器を置いた社長とは、人格が二重に見えた。乱視かもしれないと自分を疑った。すぐに、本性に戻った舅が怒鳴った。
「電話に出たら、どこの誰かを聞かないと誰だか分かんないからな。あと、もう少し大きな声でハッキリ喋れ。聞きとれない!」と、言われてみれば、確かに高齢者は耳が遠くなってくるから、と納得した。
「はい。分かりました。今後そのように対応します」と、大きな声でハッキリと答えた。
後から姑に教えられたのだが、同じ名字が四件くらいあるから、住所かフルネームを聞かないと、誰かを特定できないらしいのだ。
私は、この家にもこの土地にも慣れるまでは、まだ時間がかかると思った。多分、嫁ならば多かれ少なかれ、一度は通らねばならぬ道なのだ。だとすれば、先ほどの場面はごく普通のこと。良好な人間関係を築くためには、素直が一番の近道だと自分自身に言いきかせた。
【続く…】
本記事は幻冬舎ゴールドライフオンライン掲載の『プリン騒動』を再編集したものです。