「仕事の飲み会なら仕方ない」はずが…
夫は週三回ペースで飲みに出かけて行った。最初は、「仕事の飲み会なら仕方ない」と大目に見ていた。私は特に細かい事は聞かずに余計な詮索はしなかった。しかし、さすがに毎週頻繁に、それも同じ相手となると否が応でも疑惑は生まれる。
会社は作業服にワイシャツ・ネクタイまたは、作業服・ポロシャツで出勤していたが、いざお出かけとなると、高価なジャケットとシャツとスラックスに身を整える人だった。よそいきの服によそいきの顔を着けて出かけて行く。
確かに見栄えの良い男だった。センスの良さは認める。まるで、若い蝶がヒラヒラと夜に咲く花を探し求めるかのように。そこには色の香りが漂っていた。
案の定、今夜も飲み会らしい。
「田中さんと飲みに行くから」と夫はシャワーを浴びに着替えを持って風呂場へ向かった。私は「今日も同じ人?」と心の中で?マークをつけながら独り言を呟いていた。
するとその時、夫が脱いだ作業着のポケットの中で携帯電話が鳴った。人の携帯に断りなく出る行為は正しくないと判断していたが、十回以上鳴っているではないかとかけている相手を思い考えを改めた。
多分今夜の飲み会のお客様から急用の連絡かもしれない、私はそっと携帯を手にとり無言で出た。
女の勘が働く。「無言で出なさい」