「税理士先生に任せれば大丈夫」の恐ろしい落とし穴
相続の専門家、節税の専門家というと、税理士が最初に思いつくと思います。しかし、Eさんの例のように、税理士であってもアテにならない人もいます。これは税理士の性格や仕事に対する姿勢にもよりますし、その税理士の得意分野にもよります。
税理士ならばどの人も相続の専門家だと思われるかもしれませんが、現実は違います。税理士にも得意分野・不得意分野があるのです。
現行の税の体系には3つの分類があり、それぞれに専門性が分かれています。
①所得課税……法人税や所得税のように、個人や会社の所得に対する課税
②資産課税……相続税や固定資産税など、資産に対する課税
③消費課税…… 消費税や酒税、たばこ税など、物品の消費やサービスの提供などに対する課税
ほとんどの税理士は「所得課税」か「消費課税」を扱う仕事がメインです。病院や会社の顧問税理士として働いている人たちは、特に「所得課税」の専門家になります。大きな仕事として、会社や個人に代わって中間報告書や期末の決算書を作ったり、確定申告書を作成したり、年末調整を行ったりしています。経営改善のためのアドバイスや補助金などの申請の手続きなども得意です。
しかし、彼らは「資産課税」についてはほとんど手がけたことがないでしょう。知識としては知ってはいても、実際の案件を手がけた経験はまずないといえるほどです。医者が内科、外科、精神科などの専門に分かれているのと同じなのです。
ちなみに税理士試験では、所得税法と法人税法については試験科目が必須ですが、相続税法は選択科目のうちの一つとなっています。つまり、相続案件に対応できるほどしっかりとは学んでこなかったという税理士も多く存在するのです。
相続や承継というのは、とても個別性の強いものです。家族構成やそれぞれの人間関係、資産の種類や額や内容、病院の形態や規模、住んでいる地域、相続・承継で目指すゴール、そのときの法律や制度など、さまざまな条件・要素によって相続や承継の形は異なってきます。家庭ごとに相続・承継があるわけですから、一度や二度の経験だけでは十分な対応はできません。