「そんなになりますか」税理士も驚愕した相続額が…
東京のある医療法人では、3人の理事が3年ごとの輪番制で理事長を務めています。3人とも医学部時代の仲間で、全員70歳を超えています。
私は3人のうちの1人、Eさんの知人の相続案件に関わらせていただいたことがあり、そのつながりでEさんとも知り合いました。Eさんは、その知人からいろいろと相続・承継の話を聞いたらしく、「自分も心配になってきた」ということで、私に声をかけてくれたのです。
Eさんは仲間とつくった医療法人のほかに、個人でも医療法人を持っています。こちらの出資持分評価も相当なもので、個人資産と合わせると5億円を超えていました。ただ、個人の医療法人の節税や承継については、Eさん自身の采配でどうとでも対策が取れるので、さほど問題ではありませんでした。
厄介なのは、仲間と共同出資した医療法人のほうです。出資持分の評価をしてみたところ、9億円近くになっていました。理事1人当たり3億円です。これを何とかしない限り、Eさん個人の資産を圧縮しても根本的な解決になりません。
3億円もの資産が乗っかってきたとしたら、相続税は確実に押し上がり、後継者を圧迫してしまいます。
ほかの理事の方々の個人資産について私は関知していませんが、おそらく置かれている状況はEさんと似たようなものだろうと思われました。全員年齢も年齢ですし、相続まで猶予はありません。
そこで、その医療法人の顧問税理士に会い、「医療法人の経営状況や資産内容などを踏まえると、現時点での出資持分評価が9億円になること」や「今のままでは5年後にはさらに膨らんで10億円を超えること」などを説明しました。
顧問税理士は今まで出資持分の評価を一度もしていなかったようで、「そんなになりますか」と他人事のように驚いていました。私が「これでは相続のときに大変になりますよ。今のうちに何か対策を考えてあげてください」とお願いしました。