コロナ禍で苦しむ事業者の救済を目的とした「持続化給付金」。しかし給付実績や中小企業数、これらの業績から推測すると、少々不審な点がみえてきました。※本連載では、企業再生のスペシャリストである坂本利秋氏が、中小企業が経営難を乗り切る方法を解説していきます。

寄付について知りたい→「寄付・遺贈寄付特集」を見る>>>

前年同月比の売上高が50%を下回った企業数は?

中小企業庁が2020年10月5日に発表した事務局説明資料のグラフです。

 

 

 

これは調査会社の東京商工リサーチが行った調査結果をもとに中小企業庁がまとめたものですが、中小企業の売上高の減少を月次で表しています。有効回答数は1万を超えていますので、ある程度ランダムと想定すれば中小企業全体を表しているといって良いでしょう。

 

ポイントは売上高を前年同月比で0~49%の集団、50~99%、100%以上で3分類していることです。コロナ禍においても、20%程度の企業が前年同月より売上高を伸ばしていることが驚きです。持続化給付金との関係で着目すべきは前年同月0~49%集団の推移です。給付金は2020年1月以降の月次売上高が前年同月比で50%以上の減少が条件でしたから、その条件を満たす中小企業の割合は、4~5月はピークで20%前後、それ以外は10%程度で推移しています。

 

先ほど推定した企業の給付率68%と比較してみると、大きな違和感があります。筆者の周りの中小企業は、新型コロナで影響を受けた企業はずっと悪いまま、逆に影響が軽微な企業は軽微なままです。筆者の肌感覚では、ピークで20%ならば給付率は30~40%が良いところです。

 

簡単なシミュレーションをしてみます。持続化給付金の対象は1月分からでした。前年同月比0~49%までの企業割合を1月4%、9月、10月が各9%とおいてみても違和感はないでしょう。

 

 

1月から10月の割合を合算すると104%となり、給付率68%は、その65%に相当します。この意味するところは、毎月の売上高が50%未満となる企業の内、65%が新規企業であるということです。ちょっと考えにくいです。

 

もちろん給付金は年間売上高でなく、2020年1月以降の任意の1ヵ月が計算対象ですから、たまたまある月だけ悪かったという企業も多いとは思いますが、それにしても異常です。

 

後日、経産省より詳細な実績報告があるでしょうから、それを待ちたいと思います。

 

給付において悪質なものから並べると、このような感じでしょうか。

 

1.事業実態が全くないのに、組織的に虚偽の申請を行う。
2.事業実績はあるものの、虚偽の売上高を追加計上の上、昨年の修正申告を行う。
3.請求書の請求月を変えてもらうなどし、50%以上の売上減少月を恣意的に作る。

 

上の1、2は論外ですが、3もかなりの数がありそうです。

 

しかし筆者は給付金の制度批判をする気はまったくありません。中小企業の存続を最優先とした施策であり、大きな効果があったと思います。実際に小職のクライアントでも何社もこちらの制度を利用させていただきました。コロナが収束した段階で総括し、より良い運営方法を構築していただきたいです。

 

多くの読者は持続化給付金、家賃支援給付金などの情報はニュースなどを通じて知っているものの、各自治体の支援策をご存じないのではありませんか。

 

それこそ持続化給付金、家賃支援給付金の給付を条件として、追加の補助金を出している自治体が多くあります。金額は国の施策ほどではありませんが、コロナ禍で苦しい中、大変貴重です。ぜひ、調べてみてください。

 

 

【関連記事】

税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

恐ろしい…銀行が「100万円を定期預金しませんか」と言うワケ

 

親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「儲かるなら自分がやれば?」と投資セミナーで質問すると

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧