どうにかして家族崩壊を避けたい
「結論から言うと、やり直しは可能です」私はそう伝えた。「そうですか」エダマメさんは少し笑顔を見せた。「ただ、いくつか条件があります」「どんな条件ですか?」「エダマメさん兄弟の場合、現状は長男が土地などを相続し、次男のエダマメさんと妹が相続を放棄するという形でまとまっています。先ほど、お母様が亡くなった後に3人で話し合ったと言っていましたよね」「はい、そうです」「その話し合いのことを遺産分割協議といいます。堅苦しい言い方ですが、相続人全員で遺産の分け方を決める話し合いをするということです」「なるほど」エダマメさんはそう言い、大きく頷(うなず)いた。
「ただ、その際に決定した内容は永遠に変えられないわけではありません。遺産分割には、分割協議の解除という方法があり、もう一度相続人全員が集まり、遺産分割協議をすることができるのです」「解除することで最初に決めた内容が無効になるのですか?」「そういうことです。ただし、相続人全員で話し合わなければなりません。つまり、エダマメさん兄弟の場合、妹さんはやろうと言うでしょうが、お兄さんが応じるかどうかが問題になるでしょう」「そうなのか」エダマメさんはそう言い、う〜んと小さく唸(うな)った。話を聞く限り、兄は義姉に甘い。
兄夫婦としては資産が減るわけだから、義姉は不満だろうし、兄も素直には応じないだろうと思った。「当然、エダマメさんも当事者ですから、話し合いに応じるかどうか決めなければなりません」私はそう付け加えた。「私もですか」「ええ。相続人ですからね。エダマメさんとしてはどう考えているのですか?」そう聞くと、エダマメさんは少し考え、こう答えた。
「無責任に聞こえるかもしれませんが、私はどっちでもいいんです。義姉の贅沢は確かに不愉快ではありますが、だからといって妹のように許せないと思っているわけではありません。どんな風にお金を使おうと、兄夫婦のことです。私がとやかく言うことでもないでしょう」「そうですね」「ただ、妹の気持ちもわかります。相続をやり直すことで妹の気持ちが晴れるのなら、そっちを応援してやろうかとも思うんです」「仮にやり直すとしたら、おそらく法定相続分に従って分けます。エダマメさんもいくらか相続することになります」
「それは放棄できるものなのですか」「もちろんできます。前回と同じように、やり直しする際も放棄すればいいだけです」「そうですか。でしたら、私はいりません。お金に困っているわけではありませんし、別にフランスに行きたいわけでもありませんからね」エダマメさんはそう言って笑った。
「本当にいいのですか? お金はあって困るもんでもないですよ」「ええ。いいんです。私の希望は、兄がちゃんと家を守ってくれることと、妹が怒りを収めてくれることです。みんな仲よくとはいかないでしょうが、早くもめごとを解決したいというのが正直な気持ちなんです」
「わかりました」私はそう言い、エダマメさんの心中を察した。相続トラブルはとにかく面倒なのだ。もめる相手は家族や親族だ。お互いに距離が近く、仲がよいときはいいが、一度もめ始めると愛憎が交錯する。感情的になりやすく、泥沼化する。とくにエダマメさんのように一歩引いて見ている人にとって、愛する家族同士の喧嘩は堪えがたい。見るに堪えない。仲裁役を頼まれることもあるだろうし、頼まれなくても自分がなんとかしなければいけないという気持ちになる。エダマメさんは穏やかに振る舞っているように見えたが、心の奥底では、兄や妹に言いたいことがあるのだろうと思った。
最悪の場合は裁判所に申し立てる
「条件は、3人がやり直しに合意するということですよね?」エダマメさんが確認するように聞いた。「そうです」「つまり、兄が応じなかったらやり直しはできないということですね。おそらく義姉は反対します。そう考えると、やるだけ無駄なようにも思えてしまって」
「その点は心配いらないでしょう。というのは、遺産分割協議は相続人しか参加できないものだからです。義理のお姉さんは、被相続人であるエダマメさんの親から見ると、義理の娘です。法律上、相続人となれるのは血縁関係がある親族のみなので、協議には参加できませんし、彼女の意見で協議が難航することもありません。ただ、お兄さんが義理のお姉さんの意向を忖度(そんたく)する可能性はありますがね」
「そうですね。十分にありうると思います。兄がやり直しに応じなかった場合も、やはり現状は変えられないのですよね」「そうですね。相続人全員の合意が条件です。ただ、その場合は裁判所に不服申し立てすることができます」「そういう手もあるのですか」「ええ。申し立てするには弁護士さんを通す必要があるでしょうから、協議をやり直しする場合より手間と時間がかかりますが、お兄さんが意地でも応じなかったり、妹さんがどうしてもやり直しを希望するのであれば、その方法を考えてもよいかもしれませんね」「わかりました。いろいろ教えていただき、ありがとうございます」
「いえいえ。まずは、やり直しの協議をするかどうか、妹さんとお兄さんに確認してみてください」「そうします。出口が見えて安心しました」エダマメさんはそう言い、事務所を後にした。
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