財政赤字に悩まされるスリランカ経済。抜本的な改革を後回しにしてきた結果、数々の弊害が表面化し、ついにIMFによる支援プログラムを受け入れる方向で、協議が進んでいます。最終回は、IMFのプログラムを契機にして、スリランカは抜本改革を進めていけるのかを見ていきます。

失敗が予想される「インフレ・ターゲット」

スリランカにおいて、中央銀行の金融政策に「インフレ・ターゲット」を持ち込むことは、失敗に帰するだろう。インフレをターゲットとすることは、喧伝されているような通貨の安定性や「為替レートのボラティリティ減らすための介入」とは実は関係がない。激しく変動する中央銀行の国内の資産ポートフォリオは、スリランカがまさしく不安定なペッグ(ソフトペッグ)制であることを示している。

 

国際収支のバランスが崩れている中、中央銀行はインフレ指数をもとに何ヶ月も金利を低く保っていた。インフレ率は、強い米ドルによる低いコモディティ価格のために落下していた。安定性を維持するためには、インフレ指数にかかわらず、金利を上げる必要がある。UAE、サウジアラビア、香港はそのために金利を上げたのである。我々もそれを見習う必要がある。

痛みをともなう抜本改革の必要性

財政改革と増税は、単に短期的な修正である。今こそIMFプログラムによる抜本的な金融制度の改革に取り組む必要がある。そして財政の浪費がきちんと監査されるようにするべきなのである。しかし、そのような強い処置を嫌う国は多いため、それを強行すれば、IMFは上顧客を失うことになる。そこまで考えて、IMFの発案者は金融改革をプログラムに組み込むよう提唱しなかったのだろう。

 

結局、スリランカ、フィリピン、ラテンアメリカ諸国のようなIMFの上顧客の多くは、アメリカのアドバイスにより、自国にインフレをひきおこす中央銀行を設立した。その中央銀行が改革されれば、政治家は貧困を作り出すための最も強力なツールを奪われることになるだろう。

 

以下のことを肝に銘じてほしい。偉大な金融政策というものはない。スリランカの中央銀行は単なる「通貨偽造所」になってしまっている。しかも、普通の通貨偽造所ではなく、国全体を破壊し、国民を貧困に陥れて詐取するため、数十億の紙幣を印刷する合法化された大規模な貨幣密造所なのである。

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    この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2016年4月に掲載した記事「IMF PROGRAMS SHOULD PUSH SRI LANKAN MONETARY REFORMS, NOT JUST GIVE FISCAL PANADOLS」を、翻訳・編集したものです。

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