中央銀行による「財政ファイナンス」を止める!?
財政改善のため、国内債務の額に対して四半期毎に制限を課すIMFの量的パフォーマンス基準は、外貨準備高を再構築し、通貨を安定させることにつながるだろう。またリザーブ・マネーの限度額も設定されることが予想される。リザーブ・マネーとは、中央銀行がドルや米国債を購入することで生まれるマネーであり、前者の場合では外貨準備高が増え、後者の場合は自国通貨に圧力がかかる。
外貨準備高(純外貨準備高NIR)のターゲットが設定され、これらの準備高が増加することになる。そして、リザーブ・マネー全体の制限がされることで、中央銀行は米国債を売却せざるをえなくなる。債務の返済のために6月と12月に財務省へ外貨準備金を「売る」分を残して、米国債の保有に制限を加え、中央銀行の財政ファイナンスという暴走を止めることは必要である。
前回実施されたIMF融資でのスタンドバイ取極(SBA)では国内純資産をターゲットにしていなかったため、プログラム終了以前の2011年、中央銀行による負債のマネタイズ(通貨の発行)を許し、国際収支危機を助長した。そのため今回は税制改革のような他のパフォーマンス基準も設定されるだろう。
さらにはオイル価格にもターゲット設定が必要であるという声がある。今すぐには始められないとしても、今よりも原油価格が1バレルあたり15ドル以上、値上がりしたタイミングで導入するべきである。
失敗に終わった為替の「変動相場制」
IMFプログラムには、定型化されていないのも含めて、事前行動が組み込まれている。例えば、税制改革は典型的な事前行動であり、すぐに法制化する必要がある。また、事前行動には、通貨の変動相場制の導入もある。2015年9月、為替の変動相場制導入の試みがあったが、その前に金利の引き上げとクレジットの統制が行われず失敗に終わった。
つまり「変動相場の導入」が、単なる通過の切り下げに終わってしまい、通貨防衛と外貨準備高の損失が継続された。その主な理由には、過剰流動性を高く保つために通貨を発行し続け、その通貨が貸し出されることで、輸入が増加したことにある。
現在、海外からの投資減少によって流動性が急速に低下している。外国人投資家は変動相場で打撃を受け、変動相場の失敗によるさらなる損失を回避しようとしている。また、中央銀行が金利を上げず、銀行がより多くの融資をしたので、それらの融資が引き出されることになり、クレジットへのプレッシャーが高まっているようである。