財政赤字に悩まされるスリランカ経済。抜本的な改革を後回しにしてきた結果、数々の弊害が表面化し、ついにIMFによる支援プログラムを受け入れる方向で、協議が進んでいます。今回は、数々の問題の根本的な原因と考えられているスリランカ中央銀行の金融政策に光をあてます。

無軌道な「紙幣増刷」で道を誤る

スリランカが抱える問題の引き金が政府の予算編成にあるとしても、無責任な支出を政府に許したことには中央銀行に責任がある。もし中央銀行が無闇に通貨を発行しなければ、予算案は選挙後すぐに訂正されていただろう。2015年の修正予算において、公務員の賃上げという最悪なことが行われたのも中央銀行のせいである。

 

1970年代初頭、公務員の賃上げによってスリランカはソブリン・デフォルトに陥りかけたことを考えれば、2015年の中央銀行がいかに無責任かわかるだろう。中央銀行の体質は前政権の時よりも劣化している。

 

2015年9月時はクレジットが大きく、また金利が上がらなかったために、変動相場の導入は失敗をし、スリランカ・ルピーは下落することになった。2016年現在、金利は高く、銀行の預金額が増えているので、次の変動相場制の導入では成功する可能性がある。

 

今度の変動相場は10スリランカ・ルピー未満で行われる可能性がある。たとえ1ドル=155スリランカ・ルピーに下落したとしても、介入が行われず、流動性を注入することもなく、政府が得たドルが中央銀行に渡らなければ、為替相場は正常に戻ることができるだろう。しかし、次の変動相場においても、中央銀行は更なる不胎化外貨売り介入を行い、スリランカ・ルピーの破壊を続けるだろう。これは、2011年に石油代金の支払いのために為替介入した結果、起こったことを再現するようなものである。

「過大評価ではなかった」はずのルピーが下落

周知のとおり、通貨には「基本的なレベル」など存在しない。通貨の価格を決定するのは金融政策である。IMFの調査によると、スリランカ・ルピーは「過大評価」されていなかった。それにもかかわらず、スリランカ・ルピーは下落し、下方圧力がかかったままである。

 

スリランカの国際収支と財政の問題は、中央銀行の設立および、皮肉にもIMFの設立とともに1951年に始まった。ソ連のスパイでもあったハリー・ホワイトのようなIMFの立案者は、このようなことが起こりうるということを知りながらIMFを創設した。国民を貧困に陥らせず、財政悪化につながる悪政や大量の通貨発行が横行し、通貨下落に苦しむ「第三世界」の国になってしまわないよう、害のない中央銀行が必要なのである。

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    この連載は、GTACが提携するスリランカのメディア「ECHELON」が2016年4月に掲載した記事「IMF PROGRAMS SHOULD PUSH SRI LANKAN MONETARY REFORMS, NOT JUST GIVE FISCAL PANADOLS」を、翻訳・編集したものです。

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