相続発生時、遺言や遺書の有効性についてトラブルが発生するケースが多発しています。知識を身につけ、もしもの時に備えましょう。今回は、他人が手を添えて書かれた遺書の有効性について見ていきましょう。

姉が手を添えて書かれた遺言書…本当に有効なのか?

Q.父が死亡した後、父の自筆証書遺言が発見されました。その内容は、姉に父の全財産を相続させる、というものでした(相続人は私と姉の二人だけです)。しかし、遺言がつくられた時期の父は、病気の後遺症で両手の筋力がかなり衰えていて、字なんかまともに書ける状態ではありませんでした。


そこで、姉を問い詰めたところ、姉は「父が遺言を書きたいといったので、私は父の背後から、マジックペンを持つ父の手の甲を上から握り、父は書こうとする語句を一字一字発声しながら、二人が手を動かして本件遺言書を書き上げた」、「私は手助けしただけだ」と釈明しています。


当時、姉が父の介護で父のところによく出入りしていたので、そこで姉が父にうまく取り入って、自分に有利な遺言を書かせたに違いありません。このような遺言は無効にはならないのでしょうか。

 

A.自筆証書によって遺言をするためには、遺言を遺す人が、その遺言書の全文と日付、氏名を全て「自書」(自筆で書く)しなければいけません。この「自書」という要件を欠くと、遺言は無効となります。

 

高齢や病気で手が思うように動かず字が書けない、視力が著しく衰えて目が見えず字が書けない、といった場合に自筆証書遺言を遺すには、第三者に添え手をしてもらうなどアシストしてもらいながら、なんとか自筆で書くという以外には現実的には手段がありません。

添え手をして書かれた自筆証書遺言書は「自筆」なのか

このように、第三者が添え手をして書かれた自筆証書遺言書というのは、自筆証書遺言の「自書」という要件を満たすのでしょうか。

 

「自筆」の要件を満たすのか…
「自筆」の要件を満たすのか…

 

この点については、最高裁判所の判例(昭和62年10月8日小法廷判決)があります。

 

最高裁は、

 

他人の添え手によって書かれた遺言については、原則として無効

 

とし、例外的に有効とされるためには、以下に述べるようなとても厳しい条件を満たさなければならない、としています。

 

その理由として最高裁は、次のように述べています。

 

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