相続発生時、遺言や遺書の有効性についてトラブルが発生するケースが多発しています。知識を身につけ、もしもの時に備えましょう。今回は、他人が手を添えて書かれた遺書の有効性について見ていきましょう。

 

自筆証書遺言が「最も簡易な方式の遺言であるために、それだけに偽造、変造の危険が最も大きく、遺言者の真意に出たものであるか否かをめぐつて紛争の生じやすい遺言方式であるといえるから、自筆証書遺言の本質的要件ともいうべき「自書」の要件については厳格な解釈を必要とする」

 

このような前提のもとで、

 

「病気その他の理由により運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言」が有効となるためには、

 

①遺言者が証書作成時に自書能力を有し、

②他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり

③添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡のうえで判定できる場合

 

のいずれの要件も満たす必要がある、と判断しています。

 

裁判例上問題になるのは、②、③の要件です。他人の添え手によって書かれた遺言が有効とされる例は少なく、「第三者が積極的に手を誘導して筆記されたものと認められる」などと認定されて無効とされる例が多いように見受けられます。

 

以上を踏まえると、自力で遺言全文を書くことが困難な方は、後に無効とされるリスクを防ぐために公正証書遺言を作成するのが無難です。

 

 

※本記事は、北村亮典氏監修「相続・離婚法律相談」掲載の記事を転載・再作成したものです。

 

 

北村 亮典

こすぎ法律事務所 弁護士

 

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