相続発生時、「認知症」などにより遺言の有効性についてトラブルが発生するケースが多発しています。知識を身につけ、もしもの時に備えましょう。今回は、認知症を理由に公正証書遺言が無効となった事例をご紹介します。

認知症の親が作ったという遺言書…本当に有効?

親が亡くなった後に、他の兄弟が親の遺言書があるといってきた。しかし、遺言を作成した当時、親は認知症が進んでおり遺言書など到底できる状態ではなかった。

遺言書の内容はとても不公平だし、親が元気だったころにいっていたこととも全然違う。

 

このように訴えて、遺言書の無効を主張できないかと言うご相談が増えています。

 

このようなご相談を弁護士が受けた場合、まず遺言者の生前の医療記録等の取り寄せをしていただき、遺言当時の遺言者の精神上の障害の程度を判断します。

 

遺言が無効となるかどうかは、まず第一に遺言者の方の遺言作成当時の認知症や認知能力の状態が最重要だからです。

 

「遺言作成当時の認知症の状態」が最重要
「遺言作成当時の認知症の状態」が最重要

遺言書が有効かどうか確かめるためには

主に証拠として用いられるのは、内科や精神科の入院、通院、往診の医師のカルテや、要介護認定の際の認定調査票、主治医意見書、施設での介護記録等などです。

 

交渉や訴訟で遺言の無効を主張する場合には、上記の証拠を収集して、これらの証拠から遺言当時の遺言者の認知能力、すなわち遺言能力の有無を判断して無効であると訴えていくわけです。

 

ただし、どの程度まで認知症が進んでいれば遺言が無効になるか、ということについては明確な基準があるわけではなく、認知症が初期や中程度の場合には、特にその判断には困難が伴います。特に初期や中程度の場合には、遺言の内容の複雑性や動機、遺言者を巡る人的関係といった周辺事情も絡んできます。


したがって、訴訟の見通しを立てるにあたっては、遺言を無効と判断した裁判例を調査して、裁判所の相場感を探りつつ進めていく必要があります。

認知症を理由に、公正証書遺言が無効と判断された事例

今回紹介する東京地裁平成29年6月6日判決のケースは、遺言者の遺言当時の認知症の程度は初期から中程度であると認定した上で、遺言の内容が複雑であったこと等も考慮して公正証書遺言を無効と判断した事例です。

 

この事例は、遺言書を作成した3ヵ月前に行われた介護認定調査における主治医意見書の内容が以下の内容でした。

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