「実際には売れなくとも集客力がある」物件とは?
物件には様々な特徴があります。中には、「実際には売れなくとも集客力がある」という物件も存在します。こうした物件は広告向きです。なお、ここでいう広告とは収益不動産専門のポータルサイトに掲載される情報を指します。
たとえば、大きなデメリットを抱えていても利回りが突出して良い物件は、ポータルサイトなどの検索でヒットする可能性が高いという強みを持っています。「ほとんど人が住んでいない」とか「事故物件(自殺や事件があった部屋。賃貸では入居者に、売買では売主に対する告知義務がある。なおこれを告知事項といいます)である」といった重大な欠陥を抱えているにもかかわらずです。
なぜなら告知事項は、紙資料には詳細が記載されるものですが、不動産業界の商慣習上、ポータルサイトでは詳しく触れないのが一般的だからです。不動産会社は、こういった物件を不動産投資家を惹き付けるための集客ツールとして使います。
不動産投資家が検索キーワードとして入力しそうな「地域」や「価格帯」、「物件規模」などに当たりをつけて広告を出していくのです。並べている情報は、その不動産業者と肌が合うかを判断させるために用意しているだけで、本気で売るためのものではありません。
つまり、買い手となる不動産投資家の購買行動を先読みしているわけです。
広告とは別の物件を紹介するのが、物件営業の基本!?
集客力が最も強い要素となるのが、「利回り」です。ですから多少欠陥を抱えていても利回りが高ければ広告を出し、それをフックに顧客を自社に呼び込みます。そしてそこから、「どのような物件をお探しですか?」と営業を開始するわけです。
利回りの高い物件を入り口として顧客を集め、広告とは別の物件を紹介していく。これが不動産会社における物件営業の基本です。
「未公開情報」として売りに出し、物件の価値を高める
物件を高値で売るためには、情報の出し方も重要です。具体的には物件の情報を未公開にすることで、その希少価値を高めて最高値で売るのです。
物件情報の公開における、基本的な知識を解説しましょう。まず「公開情報」とは、一般的に「レインズ(指定流通機構)」に出ている物件を指します。「レインズ」に出て公開情報となった物件は、取扱不動産会社以外の会社でも売買仲介で取り扱えるようになります。
「未公開情報」はその逆です。「レインズ」に掲載される前の、一般に公開されていない物件を指します。
未公開物件は情報の希少性が高いため、不動産投資家に好まれる傾向があります。また誰もが見られる情報でないことから、ライバルが少ないと考える投資家も多くいます。確かに、いち早く未公開情報を手に入れることができれば、有利に買い進めることができるのは事実です。
また売りにくい物件は、未公開とすることで状況を打破できることもあります。公開情報にすると、何年も売れ残ってしまい、「他の人が手を出さないということは、何か問題がある物件なのだろうか、自分の判断は間違っているのでは」という購入者心理が働きます。前回ご紹介した広告向け物件のように、顧客を集めるためのツールとして活用された挙句、放置される可能性もあります。
情報を未公開にすることで、こういったリスクを回避しつつ、希少価値を高めていくことが可能なのです。
筆者の経営する会社でも、市場に出ていない未公開物件を中心に取り扱っています。基本的に「レインズ」には出しません。売却を検討するお客様には、必ず「市場に出る前に情報をください」とお伝えしています。そのほうが高く売れるということを、長年のキャリアの中で実感しているからです。
多くの不動産投資家は、未公開の物件こそ優良と捉える
実際のところ、未公開だけが良い物件かといえば、そんなことはありません。公開情報の中にも、数は少ないですが良い物件は存在します。
たとえば、地方の不動産会社が地主から相続対策のために購入した、東京の区分マンションの売却を依頼されたケース。「現地の相場や商慣習を知らない自分たちよりは、東京の業者に任せたほうが売りやすいだろう」と考えて情報を公開します。
あるいは賃貸管理の専門会社が、不動産オーナーからアパートの売却を相談されたケース。売買を専門に行っていない会社は、相場を知りません。必然的に値付けを行う力がありませんから、適当な安値で情報を公開することがあります。もしくは相続などを理由に地主が売り急いでいるとなれば、投げ売りに近い、安い価格で情報が公開されることもあります。
こうした場合には、安くて良い物件が「レインズ」に掲載されます。ですから、公開物件の質が悪いとは一概に言い切れません。
ただし多くの不動産投資家は、未公開の物件こそ優良と捉えています。物件を高く売るに当たって、その希少性は大きな強みになります。
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