中古物件の相場は「一つの目安」に過ぎない
中古物件の価格を決める要素として重要なものには、税額を決めるための「路線価」や周辺物件の「流通相場」などがあります。ただし、これらの数値に関しても、あくまでも、参考程度としてとらえておくべきです。
なぜ、参考程度なのでしょうか。すでに述べてきたとおり、不動産の価格はそもそもがファジーなものであり、状況によって異なるからです。路線価や流通相場は基準にはなりますが、価格を規定するまでには至らないのが実情です。
極端な話、「この価格で購入したい」という顧客が現れれば、それがその中古物件の価格となります。また、どれだけ相場どおりの値付けをしていても、売れなければ値下げせざるを得ないでしょう。
このように、中古物件の相場というものは、一つの目安にしかなりません。不動産業者のなかには、物件価格を決めるものは取引事例と勘である、と言う人もいます。それだけ、不動産の値付けは長年の経験による部分、不透明な部分が大きいものです。
しかし、売り手としても買い手としても、値段がついていなければ困ります。そこで、路線価や公示地価、あるいは流通相場の平均から値段をつけておき、状況に応じて値下げするというのが一般的な売り方となります。
いずれにしても、中古物件の値付けは個々の物件によって異なると覚えておきましょう。
過去の取引事例から価格を算出するのが一般的
中古物件の値付けは物件により異なりますが、不動産価格の評価については、一定の基準があります。いわゆる不動産価格の評価方法です。
不動産価格の評価方法には、大きく次の三つがあります。近隣の取引事例から比較して算出する「取引事例比較法(比準価格)」、再調達価額から原価補正を行って算出する「原価法(積算価格)」、そして当該不動産から発生する収益および利回りから算出される「収益還元法(収益価格)」の三つです。
これらのうち、住宅の売り出し価格としてとくに利用されているのは、やはり取引事例比較法です。過去の取引事例から価格を導き出すこの手法は、流通状況によって異なる不動産の値付けにもっとも馴染みます。
ほとんどの場合、これらの指標をもとに、不動産業者は取引を行っていると考えていいでしょう。よく聞く例としては「あの物件は○カ月で結構高く売れた」「あの物件は1年以上かかり、何度も値下げして最後は〇万円でしか売れなかった。だからこの物件はいくらくらいだろう」という話です。
要するに、過去に取引された事例をもとに、そこから不動産価格を算出するのが一般的な手法というわけです。前例をもとに相場を算出するこのような手法は、不動産だけでなく、他の分野でもよくみられます。
とくに私がチェックしているのは、相場から大きく離れた高値で売れた物件や、逆に相場よりもかなり安値で取引された物件です。じっくり調べれば大体その原因が分かります。
そして、普通の物件がある程度長期にわたって頻繁に高値で売れていれば相場が上がっている、その逆は下がっていると判断します。
あとは、現状の相場に最適な値付けをしていけば、スムーズに物件をさばけるようになります。ナマモノである不動産というのは、そのような現在価値の把握が欠かせません。
市場原理が「不動産価格」を左右する
新築物件にしても中古物件にしても、買い手がいなければ値段が付きません。売りたい人と買いたい人がマッチングしてはじめて、取引成立となります。
そのような大前提がある以上、市場原理から逃れることはできません。つまり、需要と供給の関係を無視して値付けすることはできません。
たとえば、多くの人が住みたいと思う街に、わずかな不動産しかなければどうなるでしょうか。当然、価格は上昇していきます。少なくなれば少なくなるほど、値段が釣り上がる可能性があります。
一方で、あまり人気のないエリアにも関わらず、売り手がたくさんいれば、物件価格は自然と下がります。下げなければ買い手がつかないためです。このように、市場原理が価格を左右するということも理解しておく必要があります。
そもそも高額な商品であるために、交渉の余地を残しておくというのも、不動産特有の値付けです。あらかじめ値下げ分を考慮しておけば、交渉を有利に進めることができるでしょう。こうした要因も、不動産ならではのポイントと言えます。
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