先行CI前月差+4.4で4ヵ月連続上昇、一致CI同+1.4と4ヵ月連続上昇
一致CIによる基調判断は「下げ止まり」で8月分と同じ判断で据え置き
●9月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+4.4と4ヵ月連続の上昇になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの全9系列が前月差プラス寄与度になった。
●9月分の一致CIは前月差+1.4と4ヵ月連続の上昇になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の6系列が前月差プラス寄与度、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率2系列が前月差マイナス寄与度になった。
●一致CIの3ヵ月後方移動平均は前月差+2.06ポイント上昇し、2ヵ月連続の上昇になった。7ヵ月後方移動平均は前月差▲1.93ポイント下降し、23ヵ月連続の下降になった。
●最近の、一致CIを使った景気の基調判断をみると、19年8月分~20年7月分は「悪化」の判断だったが、前回8月分で一致CIの前月差がプラス、かつ一致CIの3ヵ月後方移動平均が単月で振幅目安の0.93を上回ったので、19年5月分~7月分以来13ヵ月ぶりの「下げ止まり」に上方修正された。今回9月分でも「下げ止まり」で据え置きになった。
●「下げ止まり」から、事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数ヵ月にあった可能性が高いことを示す「上方への局面変化」に上方修正されるには、一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの7ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がプラスに変化し、プラス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差分以上振幅目安の+0.76以上になることが必要だ。過去の数字が不変だと仮定すると、10月分以降毎月一致CI前月差が+1.0の上昇が続けば、7ヵ月後方移動平均の前月差は11月分で+0.60とプラスに転じた後、12月分で+1.79となり、「上方への局面変化」の条件を満たすことになる。
●9月分の先行DIは100.0%と3ヵ月連続、景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの全系列がプラス符号になった。
●9月分の一致DIは62.5%と3ヵ月連続、景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の5系列がプラス符号に、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の3系列がマイナス符号になった。
●11月26日発表予定の9月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は11月12日である。また在庫率関連データが11月16日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。
●9月分景気動向指数・改訂値で、一致CIには所定外労働時間指数が新たに加わる。9月分速報値は84.0で8月分の81.5から増加した。一致CIでの前月差寄与度は+0.46程度になりそうだ。確報値の発表日は11月25日で、26日発表の景気動向指数・改訂値では確報値が使われる。生産指数関連データが11月16日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データが11月13日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。
●10月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。全系列が前月差プラスである。
●また、10月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列で、全系列がプラス符号になることが判明している。9月分速報値段階の先行DIは44.4%以上100.0%以下になることが確定している。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年9月分景気動向指数(速報値)』を参照)。
(2020年11月9日)
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト