頑張って医師になっても「サラリーマンより不安定」という現実

本記事は大山一也氏の著作『資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術』より一部を抜粋、再編集したものです。

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失われる「自分時間」

一般社会と同様に、医師の社会でも金持ち医師と貧乏医師の2極化が進んでいることは間違いなさそうです。この違いは一体どこにあるのか。筆者がお会いしてきた勤務医の方々の現状を紹介しましょう。

 

筆者のところへはじめて来る医師の方は、おしなべて「忙しすぎる」「割りに合わない」と嘆いています。一般的なサラリーマンの3倍前後稼いでいるはずなのに、なぜこのような言葉を口にするのでしょうか。

 

 「忙しすぎる」「割りに合わない」… (画像はイメージです/PIXTA)

「忙しすぎる」「割りに合わない」… (画像はイメージです/PIXTA)

 

一方で、すでにある程度の期間お付き合いをしている医師の多くは、筆者に将来の夢を語ってくれます。

 

筆者がお会いしてきた医師の中で、労働条件について不満を口にするのは、ほとんどが若手、または中堅医師です。その中でも、特に40歳前後の中堅が多い。

 

その理由をお聞きしていると、どうやら院内の労働量格差がかなり激しいようなのです。多くの管理職は、それがたとえ肩書だけだったとしても当直や残業を行いません。にもかかわらず、会議や提出書類を増やしたがるので、実務をする医師の仕事量は増えていきます。

 

また、いくらエリート街道を突き進んできた医師も人の子です。やはり向き不向きというものがあります。患者の目を見て話ができない、どうしても細かい作業ができない、緊急時に慌ててしまう。本来やるべきことができない、このような方も実在しているようです。

 

こういう場合、一般の企業では配置転換、またはリストラの対象となります。しかし、ほとんどの医療現場ではそのような選択肢は内容です。なぜなら、今のところ医師であること、それ自体に非常に高い価値があり、専門性を有した貴重な存在だとされているので、リストラ(不要)ということにはならないのです。結果、行き場のないまま何年も在籍している医師がいるのも事実でしょう。そのしわ寄せはフットワークのいい若手や仕事のできる中堅の業務へと集中します。

 

そこに追い打ちをかけているのが研修医の安定志向です。診療科の中でも外科や内科は花形といわれています。しかし、最近の若手は仕事とプライベートのバランスを重視するため、花形ではあるものの激務となる診療科を専門とすることを敬遠する傾向があります。

 

朝から昼は許容量オーバーの患者数を診療し、夜中は日常的に呼び出される。カルテを書けるのは、その間の深夜だけ。しかも毎日命の重さと向き合わなければならない。そんな先輩たちを目の当たりにして「いずれは医学界をけん引していく教授に」「発展途上国に行って日本の医療技術で治療をしたい」と意気込んでいた研修医が、花形診療科を選ばなくなった。今では外科は影で「3K職場」と呼ばれ、若手医師の不足が深刻になっているといいます。

 

ベテラン医師の中にはやる気がない人もいる。激務となる診療科ほど、体力がありフットワークを期待したい若手が不足している。その結果、若くて優秀な医師ほど24時間休みなしで動かざるを得なくなり、自分の人生の大切な時間は失われていくのです。

勤務医の過酷な労働環境

筆者のクライアントである医師(大学病院勤務/30代後半)は、午前の診療が定刻通りに終わることはまずありません。しかし、午後の診療は定刻に始まります。毎日昼食を取る時間は20分あればいい方。その間に院内食堂でソバを食べるか、時間がないときは、買い置きのカップラーメンをかき込んでいます。そのカップラーメンもいつも急いでいるので、どんな種類か分かっていないで食べているそうです。

 

やっと午後の診療が終わって医局に戻ってくると、廊下には製薬会社のMRがとにかくたくさん並んでいます。この後もカルテを書かなければならないし、カンファレンスもあります。そして何より疲れています。しかし、彼らだって必死で有用な情報を伝えようとしているので、話を聞かないわけにはいきません。そうこうしているうちに深夜になり、帰りのクルマの中でコンビニおにぎりの夕食をとる。そんなバランスの悪い食生活なので、医師になって10年で20kg太ったそうです。

 

不健康なのは食生活だけではありません。週に2回は当直勤務があり、当直明け1日勤務が日常的になっています。その結果、1週間の勤務時間は70時間近くになります。しかも、ただでさえ1日の睡眠時間は4時間程度なのに、当直時は救急車のサイレンですぐに目を覚ましてしまうので、熟睡することはありません。もう何年もぐっすり寝た記憶がないそうです。

 

こんな生活なので、もちろん趣味に没頭する時間もありません。学生時代から大のゴルフ好きでしたが、コースを回っているときに担当の患者の容体が急変してしまったら大変と自粛しています。また、練習場に行く際もすぐに連絡が取れなければならないと携帯電話を手放さずにいるとか。

 

栄養の偏った食生活、睡眠不足に運動不足。まさに「医者の不養生」です。見ているこちらの方が「少しは休まないと大変なことになるのでは」とハラハラします。

 

ところが優秀な医師ほど責任感が強いものです。現状の職場環境に不満はあるものの、医師を辞めたいと思ったことは一度もないといっていました。

 

筆者はこのような過酷な労働条件をはじめて聞いたとき、世の中でいう「ブラック企業」と同じでごく一部の例ではないか、と思いました。しかし、どの医師に聞いても似たような想像を絶する話ばかり。

 

「勤務医労働実態調査2021実行委員会」が行ったアンケートの結果によると、当直明けでも1日勤務を行っている医師の割合は約8割。この過酷な労働環境にもかかわらず、残業代を全額請求しているのは3割に留まっています。

 

しかも多くの病院組織は、完全な年功序列制度。いくら働かない上司でも給与は上で、同期ならばほぼ同じ。これでは「割に合わない」と嘆くのも当然でしょう。

現状維持も危うい医師の収入と健康

日本では総人口が減少する中で高齢者が増加し、高齢化率も上昇し続けています。内閣府は2013年に高齢化率は25.1%で4人に1人となり、2035年に33.4%で3人に1人、さらに2060年には39.9%で2.5人に1人が65歳以上になると推計しています。

 

火急の課題となっている医療費の増大。厚生労働省の見通しでは2010年度に37.5兆円だった日本の医療費が、2025年度には52.3兆円と約1.4倍になるとしています。

 

52.3兆円といえば2014年度国家予算の半分以上です。このまま医療費が増大していけば、現役世代が支えている保険制度の見直しは必至です。医療制度の根本的改革は今後確実に起こるでしょう。

 

そうなれば医療コストの削減が推し進められ、医師の収入への影響も十分考えられます。

 

心配なのは収入面だけではありません。政府は1982年に「このままでは医師が過剰になる」として医師の数の抑制を閣議決定しました。

 

そして2014年も医師は不足しています。OECD(経済協力開発機構)諸国の中で人口1000人当たりの医師の数を比較すると34か国のなかで29位。1位のギリシャが人口1000人当たり6.1人に対して、日本は2.2人と3分の1程度しかいないのです(2010年)。単純計算で3倍の仕事量といえます。

 

国はこの状況の深刻さにやっと気付き、2008年から医学部の定員を増加させました。これで多少なりとも医師の数は増えていくでしょう。

 

ところが日本は今後、超高齢化社会に突入します。つまり病院に通う人の数も増えていくのです。これでは医師不足が解消されるとはいえません。

 

そこで問題となってくるのが医師のハードワークです。

 

勤務医労働実態調査2012実行委員会が行った2000名を超える勤務医に対するアンケートに夜と、「あなたの業務負担は、この2年間で変わりましたか」という問いに対して「減った」という回答が17%、「変わらない」という回答が39%、「増えた」という回答が44%でした。「増えた」という回答がもっとも多く、半数近くを占めているのです。

 

実際の1週間の労働時間をたずねると初期研修医で64.4時間、当直ありの病院勤務医で58.8時間でした。このことから24時間体制を担う医師が過重な労働を行っていることがうかがえます。

 

このような過酷な勤務状況から医師の健康不安も深刻になっています。

 

「健康に不安」や「病気がち」と答えた医師は47%と約半数。「精神的ストレスを感じることが多い」「強いストレスがある」は合わせて67%に上っています。

 

さらに「最近辞めたいと思うことがあるか」という問いに対しては「いつもある」「時々ある」を合わせると34%で、「まれにある」も含めると62%でした。熾烈を極める受験戦争を勝ち抜いてきた医師の半数以上が、退職を考えるほど負担の大きい職場環境であるとは驚きです。

 

実際に筆者のクライアントである女性医師は、このような悩みを打ち明けてくれたことがあります。

 

彼女は大学病院に勤める20代後半の医師です。1日の平均勤務時間は17時間を超え、食事どころか休憩する時間もほとんど取れない毎日です。

 

休日に電話で呼び出されることも日常茶飯事。特に夜間は人手が不足しているため、本来スタッフが担当する業務も医師がやらなければ回らない状況だそうです。

 

しかも彼女の場合はまだ若手のため、大学病院の収入では生活ができません。激務の合間を縫ってほかの病院でアルバイトもしているのです。

 

現在の悩みはこれから結婚・出産をする際に、今のように全力で働くことができるかどうかということです。

 

常勤ではなく非常勤やアルバイトならばある程度の家事や育児はこなせるでしょう。しかし、それでは収入が減ってしまいますし、そもそも憧れていた医師という職業に就いたのにもの足りないのだと彼女はいうのです。

 

家事や育児と自分の理想とする医療を両立するにはどうすれば良いか、それにはある程度の資産が必要だと筆者のところに相談に来たわけです。

 

医師の過酷なハードワークだけが原因ではありません。

 

昨今は最初に診てもらった医師の判断だけを頼るのではなく、別の医師にも診断してもらうセカンドオピニオンが当たり前になりつつあります。この背景には、医療の高度化やインターネットなどの情報源が多岐にわたることで患者の知識や選択肢が増えていることなどがあります。

 

これに伴い患者の立場がどんどん強くなり、医師はリスクを避けるために細心の注意を払って説明をしなければならなくなっています。

 

また、軽傷や軽い体調不良でもタクシー代わりに救急車を呼んで、救急外来に担ぎ込まれたり、待ち時間を嫌ってあえて救急外来に来る患者も増えていると聞きます。

 

最近はこのような無理難題な要求を繰り返すいわゆるモンスター・ペイシェントが目立つ世の中なのです。これでは医師のストレスは増える一方です。

 

これほど過酷な職場環境ならば転職支度もなるかもしれません。事実、医師の転職は非常に多いと聞きます。しかし、医師不足はどこの医療機関も同じ。どこに転職してもきつい状況は変わらないようです。

 

また、転職を繰り返すことにより生涯でもらえる退職金の合計額はどんどん減っていきます。50代、15年前後の勤務で平均800万円程度ではないでしょうか。

 

一方で普通のサラリーマンの退職金はどうかというと、次のようなデータがあります。日本経済団体連合会の『2012年9月退職金・年金に関する実態調査結果』に夜と、総合職の大卒の標準者(57歳/勤続35年)の退職金額は2281万円でした。単純な比較はできませんが、医師よりもサラリーマンが大きく上回っているのは間違いなさそうです。そもそも医師の職場に多い年俸制ならば退職金制度そのものがありません。

 

額面上は高給と言われている給与。しかし累進課税によって可処分所得は一般サラリーマンとそれほど変わらない。なのについ派手な暮らしや教育費にお金を使ってしまう。気付くと少ない退職金に呆然。そんな先輩や上司を見て、将来に対して不安を持つ医師が多いのもうなずけます。

医師こそキャリアデザインを考えるべき

それでもなぜ、多くの医師の方々は頑張ることができるのでしょうか。もちろん一番は人の命を扱う責任だと思います。しかし、そのほかにも学生時代からの環境が関係しているようです。

 

知人のキャリアカウンセラーに話を聞くと、現在、ほとんどの大学では1年生からカリキュラムにキャリアデザイン講座を入れ、その中で適職診断テストを受験させています。就職活動に向けて「自分がどういう人間なのか」「何がしたいのか」「どんな職業に向いているのか」を約3年かけて掘り下げていくのです。

 

しかし、医学部の学生に対してはこのようなキャリア教育は行われていません。なぜなら、ほとんどの医学部に入学した学生は、大学に入った時点で医師になることを決めているわけですし、一般的な就職活動をしなくても就職率はほぼ100%だからです。入学後に悩むとすれば専門診療科を選ぶことですが、それは医師国家試験に合格後2年間の初期研修中に考えればいいこと、とされてきました。

 

つまり医学部に入った以上は、医師としての責任を果たすことが当たり前と期待されてきたのです。そのため医師である以前に一人の人間としてどのような人生を歩みたいのかを考える余地がなく、現在も頑張り通している、というケースがほとんどではないでしょうか。

 

しかし、昨今の医療現場は、がむしゃらに頑張るだけでは続けられなくなっています。医療技術の急速な進歩によって求められる知識量はより膨大になり、情報化社会によって患者の声が大きくなっています。このようなことを背景に、世間では医療過誤による訴訟がニュースになることが多くなってきました。

転職、転科は狭き門

ある20代後半の医師は次のようなことを語ってくれました。「36時間連続の勤務が続く中、夜中に救急で急性心筋梗塞の患者さんが運び込まれてきました。すぐに緊急手術となりましたが、先輩医師でさえ一刻を争う必至の状態で、私は何をするべきか分からず焦るばかりでした。こんな生活を一生続けることはできません。転科を考えています」

 

彼の父親は、大きな病院の院長を務める循環器外科医です。その父親に憧れ、自分も循環器外科医になるのが当たり前と思ってきました。ところが自分には適性がなく転科をしたい。同時に人生設計というものを考えるようになって資産形成の相談に来たというわけです。

 

確かに色々な医師の話をうかがっていると、専門とする診療科によって激務の度合いは違うようです。転科を考えることもあるでしょう。また業務のハードさにかかわらず「これが私のやりたかった医療だろうか」「もっと自分を活かせる診療科があるのではないか」といった考えから、やりがいを求めて転科を希望する医師も少なくないようです。しかし、転科は転職以上に難しいのではないでしょうか。

 

転科をすることが前提の転職では採用してくれる病院が少なくなります。また、転科できたとしてもこれまでの経験や知識が無駄になり、一から勉強しなければなりません。給与も下がることが多いでしょう。

 

 

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株式会社トライブ  代表取締役社長

1979年生まれ。東京の不動産投資会社にて、土地売買からアパート、マンション、ビル建設までを幅広く手掛ける。自らが考える不動産価値と収益を最大化する不動産物件を実現するため、2010年に㈱トライブを共同で設立。翌2011年、同社代表取締役就任。これからの高齢化社会では、不動産と医療は密接に連携すべきという持論の下、高収益と高付加価値を同時に実現する独自の不動産物件を多数手掛ける。自ら沖縄の医療法人にも助力し、倒産しかけた医療施設の再建に乗り出し、再生させた。また、新たな医療法人の立ち上げにも参画し、地域医療の活性化に努めている。著書に『なぜ医者は不動産投資に向いているのか?』『資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術』(いずれも幻冬舎)がある。

株式会社トライブホールディングス:http://trivehd.co.jp/

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