本記事は大山一也氏の著作『資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術』より一部を抜粋、再編集したものです。

高額な収入の維持は難しくなる

勤務医の平均年収は1500万円とも1600万円ともいわれています。一方、国税庁によればサラリーマンの平均年収は35歳から39歳男性で498万円、40歳から44歳は561万円ですから、医師は、やはり高給取りといえるでしょう。

 

小さい頃から最難関の受験を勝ち抜き、医師国家試験にも合格。さらに医師となってからも、寝る間を惜しんで患者を救うことに専念しているのだから、当然のことだと思います。「白い巨塔」とも呼ばれる医局も例外ではありません。高齢化社会に突入した日本において、医療費削減のための診療報酬改定や政策転換は、既存の医療業界に対して追い風ではありません。

 

具体的に何が変わり出しているのかは、かつての医療業界と現状を比較していく中で、この後見ていきたいと思いますが、そうなればこの先の収入増はもちろん、これまでの収入すら維持することが難しくなるかもしれません。

 

医師は苦労に見合う収入を手にすることができるのか? (画像はイメージです/PIXTA)
医師は苦労に見合う収入を手にすることができるのか?
(画像はイメージです/PIXTA)

 

こうした転換期に医師の将来の安定はどうすれば確保できるでしょうか。

資産形成が将来の安定のカギ

医師、特に勤務医の皆さんが、今後のキャリア、もっと言えば人生も含めた将来設計をする上での選択肢にはどのようなものがあるでしょうか? おもな選択肢には次のようなものがあるでしょう。

 

・転職

・フリーランス化

・開業

 

しかし、転職ではポストやリストラの問題は解決できません。よほど良い条件に恵まれない限り、現状よりも悪くなってしまうことにもなりかねません。

 

また、フリーランスは腕一本の世界ですから、とても安心とは言い難い。そもそもそれほどの専門性を有していなければなりません。

 

残る開業については、漠然とながらでも考えたことのある方も多いかと思います。それどころか、現実的には、この開業という選択を取られる方は、存外多いのではないでしょうか?

 

しかし問題なのは、開業には多額の資金やそれなりの準備期間が必要なことです。もちろん、すでに親が開業していて、そこを継ぐことになっている方もいるでしょう。だから多額の資金は必要ない、というのは早計です。自分で開業するにしても、親から継ぐにしても、ほとんどの場合、何らかの資金が必要になります。当然、設備、機器などは老朽化しますから買い替えが必要です。それ以外にも日常的に資金は必要になりますから、蓄えがあるに越したことはありません。

 

いずれにしても、皆さんが勤務医であれば、今すぐに大胆に動くというのは得策ではないはずです。まずは勤務医を続けながら、開業も見据えた確固たる基盤づくり、特に資産形成ができるかどうかが将来の安定を左右するといえそうです。

 

しかし、今何もせずにそのまま放っておくのと、将来のリスク(=不確定要素)に備えて今から対処するのでは、大きな差が出ます。特に時間が経てば経つほど、その差は広がってしまい、気付いた頃には取り返せないほどの差になってしまうのです。

 

言い方を変えれば、数年後も安定した医師であり続けるか、忙しいばかりで困窮した医師となるかの分岐点は、今この瞬間だともいえるのです。

 

かつては絶大だった教授の権力

大学病院は医療業界の中でも権威の象徴として君臨してきました。その中で「教授」に就任できれば、給与が上がるだけでなく、かつてはさまざまなメリットがあったようです。

 

たとえば製薬会社からの講演や原稿の執筆依頼。その謝礼は5万円から30万円とも聞いています。また、製薬会社からの奨学寄附金は、力のある教授の医局の場合、年間数千万円に上ることもあったそうです。

 

かつての製薬会社は、なぜそこまで教授に手厚い支援をしていたのでしょうか? それは医局の人事をはじめ、関連病院にまで大きな影響力を持っており、教授との関係次第で自社の薬の取り扱いが大きく左右されたからでしょう。

 

また、関連病院には教授が決めた人事によって医師が派遣されるわけですから、優秀な人材が来るかどうかは、教授次第です。大学の関連病院ではない、市中の病院が医局に医師の派遣をお願いした場合、その紹介料は1000万円以上ともいわれています。ちなみに教授が関連会社でバイトをした場合の手当は、1日で30万円以上と、一般医師の6倍を超えるような金額だったそうです。

 

このように医療業界全体において、教授は強力な人事権を有していました。医師の人事を一手に握り、さらに医局に入る多額の資金を左右する教授の権力は絶大というわけです。

 

ところがこれらは過去の話。医局と製薬会社の蜜月がメディアで取り上げられ、今では製薬会社の自主規制もあって、以前のような関係には戻れなくなっています。また近年の外資系製薬会社の不正論文問題によって、再度世間から厳しい目で見られるようになっていますから、今後もさらに監視は厳しくなっていくでしょう。

 

さらに人事面でも、若手を中心に医局離れは進んでいると聞いています。

 

医師としてのキャリアは医師国家試験に合格することからスタートし、多くの医師の方々は出身大学の病院で研修医となり、毎月10万円程度の低賃金でも、ハードワークをこなしてきたことと思います。しかし、このお決まりのコースも崩れ出しているそうです。

 

大学病院においては「講師」→「助教授(准教授)」→「教授」という出世コースが医師のキャリアの一つであったかと思いますが、今その一つである「教授」になるメリットは、急速に衰退してきているといえそうです。

 

純粋な給与面では、教授になることがそれほどの収入増につながらない、にもかかわらず副次的なメリットも減ってきている。なおかつ、依然として「教授」になることは非常に難しいわけです。

加速する若手医師の医局離れとキャリアの変化

今までの医師のキャリア形成は、医学部を卒業し、(任意で)出身大学の医局で研修を受ける。その後は関連病院などへの派遣を経て、戻ってから管理職を経験し、ここではじめて医局での出世を狙うのか、関連病院に勤務するのか、開業するのかといった選択ができるという流れが既定路線だったのではないでしょうか?

 

これも知り合いの医師に聞いた話ですが、このキャリア形成が変化してきているようです。今までは過酷とはいえ、医局や上司である教授の敷いたレールに乗っていれば将来も安泰だったといいます。

 

しかし内外から、これでは専門診療科に偏る、地域医療との接点が少ないといったデメリットが指摘されてきました。

 

2004年の新医師開業臨床研修制度の導入では、医学部を卒業した時点で自身のキャリアを選択できるようになりました。大学院以外でも臨床研修病院の指定を受けた病院であれば初期研修を受けられるようになり、その後の後期研修、さらにその先の勤務先まで自分で決められるようになりました。つまり一般的な労働市場では当たり前とされてきた、勤務先の選択だけでなく、正社員か契約社員化アルバイトか、といった雇用形態も自由に選べるようになったわけです。

 

これで研修医の医局離れが一気に加速したようです。実際、気になって私も調べてみたのですが、厚生労働省に夜と、2003年度に研修先として大学病院を選んだ医師は72.5%でしたが、2013年度には42.9%と30ポイント近く減少しています。

 

その理由として考えられるのは、院内政治に振り回され、いつ地方の病院に飛ばされるか心配する毎日よりもワーク・ライフ・バランスを重視してより自分らしい人生を歩もうとする最近の若者の思考があるようです。

 

新医師臨床研修制度は、医師にとって歓迎できる制度でしょう。一方で、医局から地方関連病院へ医師を送ることは、へき地への医師派遣につながってはいました。もちろん、今までのやり方が全て悪かったということでもないと思います。しかしいずれにしても新制度が導入され、同制度にはすでに関連省庁の天下り機関が多数設立されているようです。廃止になることもないでしょうから、今後はさらに医局離れが進み、医師のキャリア形成も変化していくものと思われます。

いびつ化する医師の年齢ピラミッド

また、研修医など若手医師の医局離れの原因は、制度の問題だけではないようです。政府は1982年に「2007年に医師が過剰になる」として医師の数の抑制を閣議決定しました。以来、2008年まで医師の数は抑制されることになります。

 

これにより医師の年齢ピラミッドはいびつになっていきました。

 

一般的に組織の年齢ピラミッドというものは三角形を描くのが理想ですが、月日が経つにつれ、上の部分の面積が大きくなって四角形に近づいていったのです。

 

この弊害として現れたのが、部下を持たない管理職の増加です。医師の数を抑制したため、管理職になるべき年齢に達した時点で、部下となる医師がいないのです。

 

しかし、一般企業と違い、リストラとは無縁だった大学病院は、苦肉の策として「xx教授」といったさまざまな新しい管理職ポストを生み出していきました。

 

この実務内容があやふやな管理職の出現によって、被害をこうむったのは若手医師でしょう。人数の多い管理職は雑務を行わず、人数の少ない若手は業務が増えるばかりです。しかも数年先を想像すると、管理者のポストはいっぱいで、空きそうにありません。

 

多忙になるばかり

 

 

ポストは空かない

 

 

なのに気づかいは増える一方

 

この状況では、以前のように医局にいる意味は見出せないでしょう。しかも最近は医師の転職サイトが充実しています。昼休みの5分、10分を利用すればいくらでも転職情報を得ることができるのです。民間企業では以前から人材の流動化が劇的に進んできましたが、医療業界もいよいよ例外ではなくなってきているわけです。

 

このような背景から、多くのい若手・中堅医師が医局を去っているというのはメディアでも取り沙汰されています。医局員の数が減れば、関連病院や市中の病院への医師派遣は思うようにいかなくなり、教授の関連病院などへの影響力は低下します。関連病院への影響力を持たない教授に対しては、売上増を期待する製薬会社も興味を持ちません。その結果、大学病院という「白い巨塔」を構築してきた教授職の力は激減しているようです。

 

医師にとって、既存のレールの上に乗ってがむしゃらに頑張っているだけでは、教授の椅子はもちろん、出世すら難しいのが現状ということができます。

 

 

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