※本連載は、NPO法人横浜子育て勉強会理事長 ・藤崎達宏氏の著書『3~6歳までの実践版 モンテッソーリ教育で自信とやる気を伸ばす!』(三笠書房)より一部を抜粋、再編集したものです。

AIが持ちえない、ヒトならではの能力「五感」

以前の記事『3歳児が謎の行動…「うちの子、大丈夫かな?」真相を知り驚愕』(関連記事参照)では、モンテッソーリの「敏感期」という概念を解説しました。「敏感期」とは、0~6歳の間に一度だけ訪れる「能力が大成長する期間」です。

 

モンテッソーリは3歳を「知性の境界線」(a border line in mans mental formation)と呼び、この時期を境として、子どもは新しい時期に入ると言っています。「感覚の敏感期」の到来です(『【画像】モンテッソーリの「敏感期」とは?』参照)。3歳からの「わが子の感覚の芽生え」を親として見逃さないようにしましょう。

 

0~3歳までの乳幼児期前期は、見るもの、聞くもの、触るもの、すべての印象を、カメラで写すように無意識のうちにどんどん吸収してきました。そのストック量は莫大で、巨大なバケツに無造作に放り込まれるような状態で保存されてきました。

 

3歳が近づくと、この莫大にためられた情報を意識的にきちんと整理して、理解したいという強い衝動に駆られるようになります。

 

その整理に必要になるのが「五感」(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)なのです。まさに、「感覚の敏感期」の到来です。

 

キーワードは「ハッキリ・クッキリ・スッキリ・わかりたい」です。

 

親はこの変化を見逃さずに、わが子が五感を磨ける環境を整えることが大切です。

 

研(と)ぎ澄まされた五感は、豊かな人生を楽しむ一生の友となり、これからの不確実な世を生き抜いていく一生の武器になります。

 

AIが持ちえないもの! それは「五感」です。米認知心理学者「ゲーリー・クライン博士」は、「五感を働かせることで外部から情報を収集し、直観とシミュレーションを駆使して意思決定することは、人間だからこそできること」と断言しています。

 

感覚の敏感期に突入した子どもはあたかも、「神様からの宿題」に取り組んでいるかのようです。

 

「今、あなたは触覚が発達してきているから、できるだけ、たくさんのものを手で触ってみるんですよ」

「今、あなたは何でも匂いを嗅いでみて、嗅覚を磨くんですよ」

「敏感期が終わってしまう前に、たくさん、たくさん五感で感じなさい!」

 

と神様から言われているのかもしれません。

 

「モンテッソーリ教育と言えば感覚教育」とも言われるように、五感それぞれを独立して活用するように組み立てられた教育プログラムは他に類を見ません。

「五感」は論理的思考力の土台

モンテッソーリは「人間の知性の本質は、区別をするところにある」と言っています。自分の身のまわりにある様々なものの中から、同じ性質のものを集め、それ以外のものと区別する。それこそが、物事を論理的に考える源になるのです。その区別に、フル活用される道具が「五感」なのです。そして、論理的な考え方は次の3つの段階を経て成長していきます。

 

●第一段階「同一性」

感覚の敏感期の訪れの一番のヒント! それは「同じ~!」です。3歳前後の子どもが、同じ色や同じ形など、「同一性」にこだわり出したら、わが子の「感覚の敏感期」がやってきたと思ってください。「パパとママ、同じ赤いシャツだね~」と言ったり、同じ形のブロックやミニカーだけをきれいに並べてみたり、よく観察していると、そうした兆候が必ず見られるはずです。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

●第二段階「比較」

「同じ~」ブームの次には、「比較」が始まります。高さ、大きさ、重さ、音程などを比較して、そのわずかな差にこだわるようになります。

 

「戦隊人形を背の高さ順に並べてみたり」

「荷物を両手に持って、重さを比べてみたり」

 

こんな行動が見られたら第二段階の「比較」に入ってきたと思ってください。

 

●第三段階「分類」

同じものを比較して、その差に気がつけるようになると、第三段階の「分類」に入っていきます。

 

子どもを公園に連れて行くと、何でもかんでもポケットに入れてきたりします。

 

「汚いからやめなさい! 何度言ったらわかるの!」と母親は叱るわけです。しかし、同じような行動を繰り返しているようでも、期間を分けて観察していくと、その内容が徐々に変化しているのです。最初は何でもポケットに入れてしまっていたのが、ドングリしか入れなくなる。やがて、右のポケットには丸いドングリを、左のポケットには細長いドングリを「分類」して入れるなどと進化してくるのです。

 

「同一性を見出し、比較し、分類する」、これらは、私たち大人が日常生活でフルに使っている「論理的思考」なのです。そして、その考える道具になるのが「五感」なのです。

 

大切なことは、まず親が「わが子の感覚の敏感期の訪れを知る」ことです。そして、わが子が今は、どの五感を使っているのか、興味を持ち、意識を持って見守ることが大切なのです。

 

<ポイント>

●第一段階=同一性(同じ)

●第二段階=比較

●第三段階=分類

 

次項では、この五感をどう磨くか? ご自宅でできる方法をお伝えいたします。

次ページわが子の「五感」を自宅で磨く方法
3~6歳までの実践版 モンテッソーリ教育で自信とやる気を伸ばす!

3~6歳までの実践版 モンテッソーリ教育で自信とやる気を伸ばす!

藤崎 達宏

三笠書房

わが子を、賢く、自主性のある子どもに育てるには? GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)の創業者たちも学んだ、言語力・数字力・協調性・創造力が身につくモンテッソーリ教育。 本書では、自宅で簡単にできる「ホ…

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