わが子を、賢く、自主性のある人間へと育てるには「子育ての予習」が重要です。親自身があらかじめ成長過程を学んでおくことで、適切な時期に最適な教育を施すことができます。そこでおすすめするのが「モンテッソーリ教育」。同教育本には、適時教育に欠かせない「敏感期」という概念があり、家庭における子育てにおいても非常に役立つ知識が満載なのです。※本連載は、NPO法人横浜子育て勉強会理事長 ・藤崎達宏氏の著書『3~6歳までの実践版 モンテッソーリ教育で自信とやる気を伸ばす!』(三笠書房)より一部を抜粋、再編集したものです。

叱るとは「人生に不可欠な価値観を真剣に伝える」行為

 

身体だけでなく、能力にも「成長期」があります。0~6歳の間に、運動や感覚、言語などの能力が最もよく伸びる「敏感期」が訪れます(『【画像】モンテッソーリの「敏感期」とは?』参照)。

 

この「敏感期」を親が予習して、子どもの見かたが変わってくると、子どもを叱る回数がどんどん減ってきます。

 

それでも、叱らなければいけない時にはどうすれば良いのでしょう?

 

そもそも「叱る」というのはどういうことなのでしょうか? 子育ての最終的な目的が「わが子が一人で生きていけるように手伝う」ことにあるのだとすれば、「わが子が将来生きていくのに必要な価値観を真剣に伝えること」が「叱る」ということなのだと思います。

 

この部分さえブレていなければ、体罰は論外として、親は自信を持って叱るべきです。そして、子どももそれを自分への愛情だと受けとめることができます。

 

逆に、叱るのがめんどうくさいから、子どもに嫌われたくないからといった理由で、わが子の正すべき行為を見逃すのは、愛情不足と言わざるを得ません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

叱り方のコツは「短く」「真剣に」

ただし、3歳までの叱り方と、3歳からの叱り方では変化が必要です。

 

<3歳からの叱り方>

ポイント1. 言語がよくわかる

 

3歳を過ぎると、言われている言葉はすべてわかっていると考えて良いでしょう。ただ、意味まで理解できていないことが多いので、伝え方、語調を変えて伝えます。

 

言葉が通用する分、相手側もごまかす、言い訳を言う、話をそらす、笑いを取るなどの様々な対応方法を持ち合わせるようになります。

 

そこで、より必要になるのが、親の「真剣さ」です。この時だけは、目を直視して逃げを許しません。話をそらそうとしたり、おどけた態度をとっても、「真剣に聞きなさい!」という毅然とした態度を見せます。

 

「ママは、パパは、いつもは優しいけれど、このモードに入ったら本気だな」という判断基準を子どもに植えつける必要があります。

 

注意点は「ここぞ!」という瞬間にスイッチを入れることです。そして、いつまでもダラダラ叱らないということも大切です。

 

ビシッと叱られて最初は反省していた子どもも、ダラダラ叱られているうちに、心の中で違うことを考え始めたりするものです。

 

短く、真剣に叱った後は、「わかりましたか?」、返事は「はい」もしくは「ごめんなさい」、ここで切り替え、すっぱり日常生活に戻ることが大切です。

 

おどけてごまかしたり、笑いを取ったりする傾向は、以前にその行動でその場を逃れられたという経験からくることが多いものです。父親か母親か、祖父母か誰かがそうした反応をしている可能性が高いので注意しましょう。

成長に合わせて「叱り方」をバージョンアップする必要

<3歳からの叱り方>

ポイント2. 子どもだましが効かなくなる

 

3歳までは理解度が低かったので、「寝ないとお化けが来るよ」などの、いわゆる「子どもだまし」が効きました。しかし、月齢が上がってくると、「お化けなんかいないもん!」となります。叱り方でも親のバージョンアップが必要なのです。

 

3歳を過ぎたら、子ども扱いはせずに、大人に対する口調、理論で伝えていきましょう。

 

また、4歳以降になると子どもなりの理屈を言ってくることもあります。このこと自体は悪いことではありません。単なる言い訳でなければ、子どもなりの理屈は頭ごなしに封じてしまうのではなく、「なるほど、君はそう考えたんだね」と受け入れてから、話を進めましょう。

 

「自分の意見、感情を、言葉で表現する」ことは3~6歳に絶対に体得しなくてはいけない要素です。そうした兆(きざ)しが芽生えてきたことに、気がつける親でいたいものです。

他者への配慮を促す「お友達はどう思うかな?」の問い

<3歳からの叱り方>

ポイント3. 自分以外の人の存在

 

0~3歳までは子どもは「超自己中心的」です。第三者の気持ち、存在自体も理解できないものです。お友達のオモチャもすべて自分のものなのです。

 

しかし、4歳を過ぎるころから、世の中には自分以外の人間がいて、それぞれ感情があるんだということに気づき始めます。これが以前の記事『「自分の人生の主人公になる」ために、小学校前からできること』(関連記事参照)でお話しした「他者への配慮」の始まりです。

 

園でも年中さんになると、グループ活動を通して、助け合うことを学びます。

 

叱る時にも「Aちゃんはどういう気持ちになるかなぁ?」「このままにしておいたら、次に使う人はどうだろうか?」という問いかけを使い、考えさせるようにしていきます。

叱らずにすむ環境や伝え方…「叱った後」こそ親の課題

<3歳からの叱り方>
ポイント4. 叱った後が親の課題

 

3歳を過ぎると、こだわりが深まり、個性がはっきりしてきます。特に母親から見た男の子の変わった行動は理解に苦しむことも多くなります。粗雑な言葉使いが気になるのもこの頃です。

 

まわりのお友達の影響を強く受け、「うんこ、おしっこ」など、大人が嫌がる言葉をわざと言って、男同士でゲラゲラ受ける光景は、いつの時代も必ず存在します。

 

「俺は言ってはいけない言葉を言った勇気がある者、お前も言ってみな! おれたち仲間だぜ!」のような連帯感を習得している最中なのです。こちらが過剰に反応すると、もっとやりますので静観が一番です。

 

「ダメでしょ!」と子どもを叱った後に、「さて、この子は本当は何がしたかったのだろう?」と振り返る余裕を持ってほしいものです。そして、敏感期にあてはめて「ダメ」と叱らないですむような環境作りや、伝え方はないだろうか?と発展的な考えを持っていただきたいと思います。

 

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3~6歳までの実践版 モンテッソーリ教育で自信とやる気を伸ばす!

藤崎 達宏

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