本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

7~9月期実質GDP第1次速報値・前期比は2四半期ぶりのプラス成長に

 

設備投資前期比マイナスだが、個人消費はプラス。外需・寄与度大幅プラス

 

 

●11月16日に発表される7~9月期第1次速報値では、実質GDP成長率は前期比+4.0%程度、前期比年率+16.9%程度と2四半期ぶりのプラス成長になると予測する。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で前期比年率▲28.1%と大幅なマイナスになった4~6月期の反動から、7~9月期では水準はまだ低いものの、2ケタ増の大幅な伸び率が予想される。

 

●なお、現行統計(平成23年基準)で遡れる80年4~6月期以降で実質GDPが前期比年率2ケタの増加になったのは、87年10~12月期+11.2%、89年10~12月期+12.0%、90年4~6月期+11.0%、11年7~9月期+10.3%だけで、20年7~9月期が予測通りならば、過去最高を更新することになろう。

 

●7~9月期実質GDP第1次速報値では内需前期比寄与度は+1.5%程度を予測する。内訳をみると、民間需要の寄与度が+1.4%程度のプラス寄与度、公的需要の寄与は+0.1%程度のプラス寄与度と予測する。

 

●実質個人消費は、前期比+4.5%程度の大幅なプラスを予測する。また、設備投資は前期比▲3.3%程度のマイナスになると予測した。

 

●外需は、輸出が+7.6%程度と前期比プラスに、控除項目の輸入が前期比▲7.7%程度前期比になると予測した。外需の前期比寄与度は+2.5%程度のプラスになると予測した。

 

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の7~9月期前期比は+47.5%の増加になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+1.6%の増加だ。また、参考までに商業販売額指数・小売業の7~9月期前期比をみると+8.4%の増加になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の7~8月平均対4~6月平均比は+2.5%の増加である。乗用車販売台数の7~9月期前期比は+34.1%の増加になった。GDP統計の実質個人消費(家計最終消費支出)と関連性が高い消費総合指数(月次ベース)の7~8月平均対4~6月平均比は+5.3%の増加である。総合的に考えると、新型コロナウイルス感染症対策での自粛などにより大幅に落ち込んだ4~6月期の反動で、7~9月期第1次速報値の個人消費は、前期比で+4.5%程度とかなりの増加率になる可能性が大きいだろう。

 

●設備投資の関連データである資本財(除.輸送機械)出荷指数の7~9月期前期比は▲4.6%の減少になった。一方、建設財は同▲0.1%の減少である。総合的に考えると、最終的に供給サイドから推計される7~9月期の実質設備投資は前期比▲3.3%程度の減少と予測した。

 

●民間在庫投資(民間在庫変動)の前期比寄与度は▲0.5%程度とみた。ARIMAモデルにより内閣府が現時点での情報を使って算出・公表した、7~9月期の原材料在庫の季調済実質値前期差は▲3兆1,885億円、仕掛品在庫の季調済実質値前期差は1兆5,589億円である。また、鉱工業在庫指数の前期比は、4~6月期は▲5.3%だったが、7~9月期は▲3.1%になったことなどを考慮した。

 

●実質輸出入の動向をみると輸出の7~9月期前期比は+13.3%の増加になった。控除項目の輸入は同▲8.1の減少になっている。7~9月期のモノ分だけでみると、7~9月期の外需の前期比寄与度は大幅なプラスになる可能性が大きいと判断できよう。サービスも含めたGDPの輸出の7~9月期前期比は+7.6%の程度の減少、輸入は同▲7.7%程度の減少と予測した。7~9月期の外需の前期比寄与度は+2.5%程度になると予測する。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年7~9月期実質GDP(第1次速報値)予測』を参照)。

 

(2020年10月30日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

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