相続というのは、プラスの財産だけを引き継ぐのではありません。被相続人の財産状態「すべて」を相続するのですから、マイナスの財産も相続することになります。 ※本記事は、青山東京法律事務所の代表弁護士・植田統氏の書籍 『きれいに死ぬための相続の話をしよう 残される家族が困らないために必要な準備』(KADOKAWA)より一部を抜粋したものです。
甥と姪に届いた衝撃の手紙。「どういうこと!?」
それから、半年たったある日、拓也さんと静香さんのもとへ、商工ローンから手紙が届きました。
「3000万円を来月末までにお支払い願います」という文面です。
拓也さんと静香さんは驚いて、商工ローンに電話をすると、「あなた方のおじさんの鈴木四郎さんが半年前に亡くなりました。息子さんの進一郎さん、お兄さんの三郎さんが相続放棄をしたので、四郎さんの3000万円の借金は、あなた方に相続されています」との回答が返ってきました。
拓也さんと静香さんには、まさに青天の霹靂です。どういうことなのか理解できず、田舎の三郎おじさんに何年ぶりかで電話をしてみることにしました。
三郎おじさんに聞いてみると、四郎おじさんが亡くなったのは、本当の話のようです。そして、進一郎さん、三郎おじさんが相続を放棄したことも確認できました。二郎さんのところは、子供がいませんから、代襲相続するものがいません。すると、一郎さんの子供である自分たち2人が代襲相続人ということになるようです。
拓也さんと静香さんは、ようやく事の顛末がわかり、なぜ自分たちに商工ローンから手紙が送られてきたのか、その理由がわかりました。
でも、ほとんど会ったこともない四郎おじさんの借金を相続するなど、言語道断です。2人は、弁護士さんに相談にいきました。
得られた回答は次のようなものでした。
青山東京法律事務所 代表弁護士
1981年に東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行し、外国為替、融資業務等を経験。
その後、アメリカ ダートマス大学MBAコースへの留学を経て、世界の四大経営戦略コンサルティング会社の一角を占めるブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)に入社し、大手金融機関や製薬メーカーに対する経営戦略コンサルティングを担当。
その後、転じた野村アセットマネジメントでは資産運用業務を経験し、投資信託協会でデリバティブ専門委員会委員長、リスク・マネジメント専門委員会委員長を歴任。
その後、世界有数のデータベース会社であるレクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長となり、経営計画の立案・実行、人材のマネジメント、取引先の開拓を行った。弁護士になる直前まで、世界最大の企業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズに勤務し、ライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当した。
2010年弁護士登録を経て南青山M’s法律会計事務所に参画し、2014年6月独立して青山東京法律事務所を開設。
現在は、銀行員、コンサルタントと経営者として蓄積したビジネス経験をビジネスマンに伝授するため、社会人大学院である名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を学生に講義するほか、数社の社外取締役、監査役を務めている。過去5年間に、経営、キャリア、法律分野で精力的に出版活動を展開している。
主な著書に「きれいに死んでいくための相続の話をしよう」(KADOKAWA)、共著に「マーケットドライビング戦略」(東洋経済新報社)「企業再生プロフェッショナル」(日本経済新聞出版社)など。
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連載きれいに死ぬための相続の話をしよう~残される家族が困らないために必要な準備