両親が離婚をしても親子関係は消えません。どちらが親権をとろうが、両者から相続できます。では後妻がバツイチで、前夫との子を連れて、新しい夫と結婚するとどうなるのでしょう? 連れ子と新しい夫との間には、養子縁組をしない限り親子関係は生じません。こうしたちょっと複雑な関係が相続トラブルにつながるのです。 ※本記事は、青山東京法律事務所の代表弁護士・植田統氏の書籍 『きれいに死ぬための相続の話をしよう 残される家族が困らないために必要な準備』(KADOKAWA)より一部を抜粋したものです。
相続争いで妹に負けた長男。嫁は激怒し続け…
■前妻の子も相続人、でも後妻の子が得をする
過去記事で述べたように、拓也さんは、母・真理子さんからの相続のときに、妹の静香さんにだまされ、たった300万円余分に現金をもらっただけで、家を取り上げられてしまいました(関連記事『年収400万円夫婦…完全同居の親の死後、理不尽な遺産額で撃沈』)。
それでも、拓也さんは、もらった現金1200万円を頭金にして、妻の聖子さんがほしがっていた5000万円の東京のマンションを購入しました。このときは、3~4年のうちには静香さんが家から出て行って、そのときは千葉の家と土地を売って半分の現金をもらい、住宅ローンを早めに返そうと思っていたのです。
ところが、待てど暮らせど、静香さんは家から出て行こうとはしません。正社員の仕事も見つかり、収入も安定してきたようですが、実家は居心地がよく、全く出ていく気配がありません。
これを見た聖子さんは、「だから、静香さんに譲歩したらダメだって言ったじゃない。これから剛の教育費だってかかるようになるのに、ローンの支払いはどうするの? 家を売らないと、一生、借金地獄だわ!」と拓也さんを責め立てます。
拓也さんは、家に帰ると、毎日のように、聖子さんからがみがみ言われるので、だんだん聖子さんと口を利かなくなりました。土日は、拓也さんは剛君とはよく遊ぶのですが、聖子さんとは食事の時に二言三言しか口を利きません。
こうして冷戦状態が続きました。
5年後、拓也さんの地方赴任の話が持ち上がります。
青山東京法律事務所 代表弁護士
1981年に東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行し、外国為替、融資業務等を経験。
その後、アメリカ ダートマス大学MBAコースへの留学を経て、世界の四大経営戦略コンサルティング会社の一角を占めるブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)に入社し、大手金融機関や製薬メーカーに対する経営戦略コンサルティングを担当。
その後、転じた野村アセットマネジメントでは資産運用業務を経験し、投資信託協会でデリバティブ専門委員会委員長、リスク・マネジメント専門委員会委員長を歴任。
その後、世界有数のデータベース会社であるレクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長となり、経営計画の立案・実行、人材のマネジメント、取引先の開拓を行った。弁護士になる直前まで、世界最大の企業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズに勤務し、ライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当した。
2010年弁護士登録を経て南青山M’s法律会計事務所に参画し、2014年6月独立して青山東京法律事務所を開設。
現在は、銀行員、コンサルタントと経営者として蓄積したビジネス経験をビジネスマンに伝授するため、社会人大学院である名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を学生に講義するほか、数社の社外取締役、監査役を務めている。過去5年間に、経営、キャリア、法律分野で精力的に出版活動を展開している。
主な著書に「きれいに死んでいくための相続の話をしよう」(KADOKAWA)、共著に「マーケットドライビング戦略」(東洋経済新報社)「企業再生プロフェッショナル」(日本経済新聞出版社)など。
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連載きれいに死ぬための相続の話をしよう~残される家族が困らないために必要な準備