本記事では、嫁姑の関係が相続に影響してくるケースを見てみましょう。読者の皆さんは、きっと嫁姑の関係なんて、相続に関係ないだろうと考えていらっしゃると思います。ところが、子供のいない夫婦が増えた今日、それが大問題となるのです。 ※本記事は、青山東京法律事務所の代表弁護士・植田統氏の書籍 『きれいに死ぬための相続の話をしよう 残される家族が困らないために必要な準備 』(KADOKAWA)より一部を抜粋したものです。
「早く孫の顔を見せておくれ」迫る姑に辟易し…
1.仲の悪い嫁姑の関係には要注意
【鈴木家の家系図】を見てください。本記事では、二郎さんのケースを取り上げます。二郎さんは、この図に見るように、由美子さんと結婚しています。夫婦仲はとてもよいのですが、子供はいません。
それが、二郎さんの両親の英樹さん、葉子さんには残念でなりませんでした。30代のころ、二郎さんが田舎に帰る度に、葉子さんは、「孫はまだか。まだできないの。早く由美子さんに勤めをやめさせて、孫の顔を見せておくれ」と二郎さんに言い続けてきたのです。
由美子さんは仕事を続けていましたが、本人も早く子供をほしいと思っていました。でも、義理の母の葉子さんが、二郎さんにしつこく孫の催促をしているのを聞くと、いやな気持ちになります。
「私だって子供がほしいのに。そっとしておいてほしい」と。
由美子さんは、次第に二郎さんの実家から足が遠のきます。お盆に帰るのも避けるようになりました。
35歳を過ぎるころから、1年に1回、正月に1日だけ二郎さんの実家に顔を出すだけになりました。5年前に英樹さんが亡くなってからは、二郎さん夫婦は、正月の帰省も日帰りにしています。帰省しても、葉子さんと由美子さんが交わす言葉は少なく、しらーっとした空気が流れていました。
今、二郎さんは66歳。60歳で定年を迎えてから、家事はもっぱら二郎さんの仕事となりましたが、家事を手早く済ませては、好きな囲碁には毎日、ゴルフには毎週出かけていました。
二郎さんと由美子さんは、由美子さんが今年いっぱいで定年退職を迎えたら、共働きでためてきたお金を使って、2人で世界中を旅して、老後を過ごそうと楽しみにしていました。
青山東京法律事務所 代表弁護士
1981年に東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行し、外国為替、融資業務等を経験。
その後、アメリカ ダートマス大学MBAコースへの留学を経て、世界の四大経営戦略コンサルティング会社の一角を占めるブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)に入社し、大手金融機関や製薬メーカーに対する経営戦略コンサルティングを担当。
その後、転じた野村アセットマネジメントでは資産運用業務を経験し、投資信託協会でデリバティブ専門委員会委員長、リスク・マネジメント専門委員会委員長を歴任。
その後、世界有数のデータベース会社であるレクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長となり、経営計画の立案・実行、人材のマネジメント、取引先の開拓を行った。弁護士になる直前まで、世界最大の企業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズに勤務し、ライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当した。
2010年弁護士登録を経て南青山M’s法律会計事務所に参画し、2014年6月独立して青山東京法律事務所を開設。
現在は、銀行員、コンサルタントと経営者として蓄積したビジネス経験をビジネスマンに伝授するため、社会人大学院である名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を学生に講義するほか、数社の社外取締役、監査役を務めている。過去5年間に、経営、キャリア、法律分野で精力的に出版活動を展開している。
主な著書に「きれいに死んでいくための相続の話をしよう」(KADOKAWA)、共著に「マーケットドライビング戦略」(東洋経済新報社)「企業再生プロフェッショナル」(日本経済新聞出版社)など。
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連載きれいに死ぬための相続の話をしよう~残される家族が困らないために必要な準備