認知症について、数多くの情報、文献が存在しますが、知り合いや肉親が認知症になった際に「ネットに書いてある症状が出ない」というケースは少なくありません。今回は、医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長の梶川博氏、医学博士である森惟明氏の共書『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、認知症の症状に個人差がある理由を解説します。

 

ある人には一部の症状が強く出る一方で、他の症状は全く出ないこともあります。6割から9割の患者さんに経過中にみられるとされ、どの症状が主体となるかは患者さんによる個別性が高いといわれます。

 

周辺症状の発現に関連する要因として身体状態、疼痛や不快感、薬の副作用、心理社会的要因、環境的要因などが挙げられますので、必要に応じてこれらの改善を図ることも大切です。

 

また、周辺症状は、その人の中核症状の状態、遺伝、本人の性格、身体状況、生活環境、介護者との関係性など、実に多くの要因が複雑に絡み合って現れると考えられています。周辺症状のうち行動症状としては、徘徊、暴力・暴言、嗜好の変化、食行動の異常(異食)、失禁・不潔行為、日内リズムの変動、無反応などがあり、介護に対する抵抗を強く示すこともあります。

 

心理症状としては、抑うつ、自発性低下、不安・焦り・不穏、幻覚、不眠(睡眠障害)、妄想などがあります。


その具体例は次のようなものです。

 

妄想:財布や物が盗まれたと言う
幻覚:現実にはないものを見たり聞いたりしたと言う
不穏:いらいらして落ち着かない、1人では落ち着いていられない
抑うつ:気分が沈んで元気がない、引っ込み思案になる
徘徊:何か探したり、居心地が悪かったりなどの原因で歩き回る。歩いて外出し、視空間認識障害のために家に帰れない状態が問題になる
異食:食べられないものでも口にする
介護拒否:入浴や着替えなどの介護を嫌がる
暴力、暴言:納得がいかないことがあると大声を出したり、手を挙げたりする

「周辺症状」は、患者本人や周囲のQOLを低下させる

認知症の人がみな同じ行動をするとは限りません。人によっては非常に暴力的に振る舞ったり、失禁・不潔行為を繰り返したりすることもあります。しかし他の人では、こういった症状が全くなく、むしろ不安が強くて自分から行動しない、じっと家の中にこもっている、たまに外へ出ると徘徊して家に帰ってこられない、ということもあります。

 

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改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

梶川 博、森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

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