最悪、認知症に至ることも…「自覚のない脳梗塞発症」の恐しさ

実は認知症のタイプにより症状や経過が少しずつ異なり、経過も治療も予後も介護の仕方も違ってきます。正しい診断を受けているか判断するためにも、認知症についての知識を深めておく必要があります。今回は、医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長の梶川博氏、医学博士である森惟明氏の共書『改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「血管性認知症」​について詳しく見ていきましょう。

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脳血管障害が原因で起こる「血管性認知症」​

脳血管障害(脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化症)が原因で起こる認知症は、他のタイプとの混合型を含めると、全体の20~30%を占めるといわれています。若年性認知症(65歳未満)では約4割を占めるとされています。

 

脳組織の壊死(梗塞、出血、微小出血:マイクロブリード)や瘢痕化(線維化:グリオーシス)を来して神経細胞死や細胞間ネットワーク損傷を来すタイプです。50歳位から発症が多くなり、男性に多くみられます。高血圧や脳梗塞などの動脈硬化性疾患の既往症がある患者さんが多く、脳卒中後に発症するケースでは発作の3カ月以内に認知機能の低下が始まります。

 

一般的に、脳血管障害の発作が起こるたびに症状が増えていき、寝たきり状態にいたる全経過は約7年と、アルツハイマー型認知症より予後は不良です。アルツハイマー型認知症は2年から20年程度かけて徐々に進行しますが、血管性認知症の場合は麻痺などを伴って階段状に進行することが特徴的です。

認知機能の障害は比較的軽く、「まだら認知症」となる

症状は障害を受けた脳の部位によって違います。認知機能の障害は比較的軽く、いわゆる「まだら認知症(まだらボケ)」となるため、記憶障害は進んでいても計算や理解力は正常である一方で、複雑な作業ができないなど、症状には不均一な状態がみられます。

 

症状には不均一な状態がみられる(画像はイメージです/PIXTA)
症状には不均一な状態がみられる(画像はイメージです/PIXTA)

 

発症は比較的急性で、脳発作のたびに階段状に進行します。片麻痺、言語障害(失語、構音障害)、嚥下障害(むせ、誤飲、誤嚥、肺炎)、歩行障害、尿失禁、病的反射など、局所の神経症状を伴います。

 

精神症状としては、怒りっぽさ、意欲低下、抑うつ症状、感情の障害がみられ、症状が進むと、せん妄や被害妄想などが現れます。脳血管障害の中でも、小さな脳梗塞を何度も起こす脳・小血管病性「多発性脳梗塞」の場合、目に見える障害がなく自覚症状もないため、発症しても気づかないことが多いのです。ところが、発症から10年以上が経過すると、高い確率で血管性認知症になるといわれています。

 

黒く見える領域が梗塞巣
[図表1]認知症を呈した脳梗塞のCT像(3例) 黒く見える領域が梗塞巣

 

白質変性所見と多発性ラクナ性脳梗塞が認められる
[図表2]脳・小血管病変性認知症のMRIフレア画像 白質変性所見と多発性ラクナ性脳梗塞が認められる

 

医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター会長
日本脳神経外科学会認定専門医
日本脳卒中学会認定専門医
日本神経学会・日本認知症学会会員
広島県難病指定医、
広島県「もの忘れ・認知症相談医(オレンジドクター)
日本医師会&広島県医師会
日本医療法人協会&全日本病院協会広島県支部所属。

広島県広島市出身 1957年修道高等学校卒業、1963年京都大学医学部卒。

1964 聖路加国際病院でインタ−ン修了、医師国家試験合格、アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格、1968年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。
1970年広島大学第二外科・脳神経外科(助手)、1975年大阪医科大学第一外科・脳神経外科(講師、助教授)。
1976年ニューヨーク モンテフィオーレ病院神経病理学部門(平野朝雄教授)留学。1980年梶川脳神経外科病院(現医療法人翠清会・翠清会梶川病院、介護老人保健施設、地域包括支援センター)開設。医学博士。1985年槇殿賞(広島医学会会頭表彰)、1996年日本医師会最高優功賞。

著者紹介

医学博士

大阪府立北野高校を経て、1961年京都大学医学部卒。大阪北野病院でインタ−ン修了。

1961年アメリカ合衆国臨床医学留学のためのECFMG試験合格。
1967年京都大学大学院修了(脳神経外科学)医学博士。1968年日本脳神経外科学会認定医。1969年京都大学脳神経外科助手。
1971年シカゴノースウエスタン大学脳神経外科レジデント。1975年京都大学脳神経外科講師。1979年京都大学脳神経外科助教授。1981年高知医科大学(現高知大学医学部)脳神経外科初代教授。
1992〜1999年厚生省特定疾患難治性水頭症調査研究班班長。1992年第2回高知出版学術賞受賞。
1996〜2000年高知県医師会理事。1999〜2001年国際小児神経外科学会倫理委員会委員長。
2000〜2001国際小児神経外科機関誌「Child's Nervous System」編集委員。2000年高知大学名誉教授。著書多数。

著者紹介

連載認知症に負けないために 知っておきたい、予防と治療法

改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

改訂版 認知症に負けないために知っておきたい、予防と治療法

梶川 博、森 惟明

幻冬舎メディアコンサルティング

「脳梗塞・認知症・運動器症候群」 三大疾患 徹底解説シリーズの改訂版! 三大疾患「脳梗塞・認知症・運動器症候群(ロコモ)」を治療・予防することで「寝たきり」と「認知機能低下」を防ぎ、高齢者が自立して健やかな老後…

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