過熱する「医療事故」の報道…儲かるのは保険会社という実態

医療事故がマスコミで大きく報道されるようになり、現在の医療現場は「できることはすべてやった」と言い訳をするための、過剰な防衛医療となってしまっています。今回は、愛知医科大学・内科学講座肝胆膵内科学准教授である角田圭雄氏の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、加熱する「医療安全」信仰の恐ろしさについて解説していきます。

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上智大学名誉教授でもあるアルフォンス・デーケン(1932-)は、「医者はみなやぶ医者である。なぜなら、いくら医者が努力しても必ず失敗して、人間はいずれ死ぬ」と言っています。学会で医療安全を取り上げるほど、医師は患者の命よりも自身の身を守ることに必死になっています。

 

箱の中に赤のカードが45枚、青のカードが5枚入っているとします。皆様は中から1枚引くときにどちらを予想するでしょうか?

 

当然答えは、赤と予想するのが確率論の常識だと考えます。皆様は青を引いたときに自身の選択が誤っていたと考えるでしょうか? もちろん青が出る可能性は10%ありますが、確率論でいうと赤と答えるのが正解だと思います。

 

同様に、残念ながら医療現場では青が出るケースに出くわします。しかし青が出たからといっていちいち訴訟を起こされていたのでは大変です。最初から、間違えたくないならくじに挑戦しなければいいのであり、医療を受けない(くじを引かない)といった選択もあり得るわけです。

 

したがって究極の医療安全は何も医療を施さずに、自然経過を見るということになります(くじを引かなければ失敗しないし、テレビドラマのドクターXのように「私失敗しないので」ということはあり得ないわけです)。

「それは絶対受けないとだめな検査ですか?」への答え

よく患者さんから「それは絶対受けないとだめな検査ですか?」「治療せずに放っておいたらだめですか?」といった質問を医療者の方は受けると思います。多くのまじめな医療者は一生懸命に理論やエビデンスを説明して、診療を受けさせようと努力しますが、そもそも絶対に受けないといけない医療なんてこの世の中に存在するでしょうか。

 

医療によってメリットを受けたいかどうか、宝くじを買って当選金を狙うかどうかは、希望する人が医療を選択する、すなわち1億円を望む人が宝くじを買えばいいのです。

 

車を運転すれば一定の確率で事故死する可能性がありますが、車そのものを廃棄しようとする運動はありません。車に乗ることで享受するメリットがそのリスクを上回ると計算するので、自動車を廃棄しないのです。もちろん事故を減らそうとする努力は必要で、制限速度未満で走行していれば死亡事故はほとんど回避できるかと思います。

 

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愛知医科大学 内科学講座肝胆膵内科学准教授

愛知医科大学内科学講座肝胆膵内科学准教授(特任)。一般社団法人日本医療戦略研究センター(J-SMARC)代表理事。医師、博士(医学)、MBA(医療経営学修士)。

1970年大阪府生まれ。1995年京都府立医科大学卒業、2002年京都府立医科大学大学院で博士号(医学)を取得。市立奈良病院消化器科部長、京都府庁知事局知事直轄組織給与厚生課健康管理医(総括)、京都府立医科大大学院医学研究科消化器内科学講師を経て2016年10月から現職。2015年英国国立ウェールズ大学経営大学院でMBA in Healthcare Management(医療経営学修士号)を取得。立命館大学医療経営研究センター客員研究員を兼任。日本肝臓学会評議員・指導医。日本消化器病学会評議員・指導医。日本医療経営実践協会医療経営士3級。

著書に『最新・C型肝炎経口薬治療マニュアル』(2016年4月、編集および共著)『症例に学ぶNASH/NAFLDの診断と治療|臨床で役立つ症例32』(2012年4月、編集および共著)、『最新!C型肝炎治療薬の使いかた』(2012年10月、編集および共著)、『見て読んでわかるNASH/NAFLD診療かかりつけ医と内科医のために』(2014年8月、編集および共著)

著者紹介

連載MBA的医療経営~目指せ!メディカルエグゼクティブ

MBA的医療経営 目指せ!! メディカルエグゼクティブ

MBA的医療経営 目指せ!! メディカルエグゼクティブ

角田 圭雄

幻冬舎メディアコンサルティング

MBAの視点から医療機関を経営するための最新知識を網羅する1冊。 病院経営は、営利を目的とした企業の経営とは多くの点で異なります。診療や看護、医療技術や医療事務などの特定分野の管理能力、そして「全体最適」の視点が必…

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