過熱する「医療事故」の報道…儲かるのは保険会社という実態

医療事故がマスコミで大きく報道されるようになり、現在の医療現場は「できることはすべてやった」と言い訳をするための、過剰な防衛医療となってしまっています。今回は、愛知医科大学・内科学講座肝胆膵内科学准教授である角田圭雄氏の書籍『MBA的医療経営』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、加熱する「医療安全」信仰の恐ろしさについて解説していきます。

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人命を尊重し、「医療安全」を語ることは重要だが…

人命を尊重し、医療安全を語ることは重要ですが、社会全体の“不寛容な空気”には危機感を抱きます。一般の皆様には医療行為はそもそもリスクがあり、不確実性を伴うことを認知していただきたいのです。

 

医療事故などがマスコミで大きく報道されることで、現在の医療現場はどんどん萎縮しています。患者のための診療として心の底では提案したいことを持っていても、リスクがあれば控えておこうといった空気があります。現在の医療安全は「感情的なリスクゼロ」を目指さなければならないという不寛容さがあります。

 

しかし、医療費の増加が問題視され、有限の人的資源の中で成果を上げるには、一定の合理性が必要です。感情的なリスクゼロと理性的なリスク管理とではどちらが正しいのでしょうか?

 

目標が最大化すなわちリスクゼロだと、いつまでも達成できないことになります。どこまでのリスクなら許容できるのかといった範囲を合理的に設定する必要があります。

医療には「リスク」や「不確実性」が伴うもの

幸福の追求にはコストがかかるのと同様に、医療にはリスクや不確実性が伴います。ヒマラヤに登れば、雄大な景観を見て、達成感を得ることができますが、当然遭難して死亡するリスクもあります。

 

「あらゆる疾患の中で、医療が極めて有効なのはわずか11%に過ぎず、80%は医師がいなくても予後に影響しないばかりでなく、9%は医療を受けることによってかえって予後が悪くなる」という超一流の臨床系医学雑誌『New England Journal of Medicine』の元編集長であるフランツ・ジョセフ・インゲルフィンガー(1910-1980)の有名な言葉がありますが、医療は必ずしも有益なことばかりとは限りません。

 

医療は必ずしも有益なことばかりとは限らない?(画像はイメージです/PIXTA)
医療は必ずしも有益なことばかりとは限らない?(画像はイメージです/PIXTA)

 

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愛知医科大学 内科学講座肝胆膵内科学准教授

愛知医科大学内科学講座肝胆膵内科学准教授(特任)。一般社団法人日本医療戦略研究センター(J-SMARC)代表理事。医師、博士(医学)、MBA(医療経営学修士)。

1970年大阪府生まれ。1995年京都府立医科大学卒業、2002年京都府立医科大学大学院で博士号(医学)を取得。市立奈良病院消化器科部長、京都府庁知事局知事直轄組織給与厚生課健康管理医(総括)、京都府立医科大大学院医学研究科消化器内科学講師を経て2016年10月から現職。2015年英国国立ウェールズ大学経営大学院でMBA in Healthcare Management(医療経営学修士号)を取得。立命館大学医療経営研究センター客員研究員を兼任。日本肝臓学会評議員・指導医。日本消化器病学会評議員・指導医。日本医療経営実践協会医療経営士3級。

著書に『最新・C型肝炎経口薬治療マニュアル』(2016年4月、編集および共著)『症例に学ぶNASH/NAFLDの診断と治療|臨床で役立つ症例32』(2012年4月、編集および共著)、『最新!C型肝炎治療薬の使いかた』(2012年10月、編集および共著)、『見て読んでわかるNASH/NAFLD診療かかりつけ医と内科医のために』(2014年8月、編集および共著)

著者紹介

連載MBA的医療経営~目指せ!メディカルエグゼクティブ

MBA的医療経営 目指せ!! メディカルエグゼクティブ

MBA的医療経営 目指せ!! メディカルエグゼクティブ

角田 圭雄

幻冬舎メディアコンサルティング

MBAの視点から医療機関を経営するための最新知識を網羅する1冊。 病院経営は、営利を目的とした企業の経営とは多くの点で異なります。診療や看護、医療技術や医療事務などの特定分野の管理能力、そして「全体最適」の視点が必…

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