新型コロナウイルスの流行により、全世界で医療崩壊が相次いだ昨今、「命の線引き」という言葉も取り沙汰されるようになりました。ジレンマに苦悩する医療従事者も多く、医療現場では「医師のマネジメント」が重要になっています。本記事では、経済学の視点から、医療経営について考察していきます。

日本の医療システムは「コスパ」に優れている

【ポイント】
・医療費は限られた資源をいかに有効に生かすかといった経済学の視点が必要で、費用とアウトカムのバランスを考えるべきです。

・人は経済的に完全に合理的ではなく、非合理的部分が存在するので(限定合理性)、行動経済学の視点は医療経営においてもカギとなります。


2015年度の国内の医療費総額(国民医療費)は42兆円を超えており、さらに2025年度には医療や福祉に要する総額は73兆円に達すると見込まれています。

 

経済的観点を外して医療を考えることはできませんが、国内総生産(GDP)全体に占める日本の医療費はたった8.3%であり(先進国でも最低レベル)、平均余命は世界一ですから、日本の医療システムは極めてコストパフォーマンスがいいわけです(もちろん医療のみが平均寿命の延長に寄与したとは考えませんが)。

 

そこで今回は、経済学の視点から、医療経営を考察してみたいと思います。

経済学=家計を管理するもの(オイコノミア)

経済学(economy)といえばお金勘定、いかに1円でも多くの貨幣を稼ぎ出すかといった視点にとらわれがちです。アリストテレスが、貨幣はもともと交換のための手段、しかし、いつしかそれをためること自体が目的化したと批判しています。経済学とは「家計を管理するもの(οικονομία)(オイコノミア)」というギリシャ語に由来しています。

 

家計には限りがありますが、限りあるお金をどう使うか? 食費、衣料費、教育費、交際費にどう分配するか? を考えることが経済学です。ハーバード大学のニコラス・グレゴリー・マンキュー教授(1958-)によると、経済学とは「社会がその希少な資源をいかに管理するかを研究する学問」です(N. グレゴリー・マンキュー著、足立英之、石川城太、小川英治、地主敏樹訳、中馬宏之、柳川隆訳『マンキュー経済学〈1〉ミクロ編(第2版)」東洋経済新報社』)。

 

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