「消費税の増税が不可欠だ」があまりにも詭弁なワケ
これまで、税金は、政府の支出に必要な財源を確保するのに不可欠なものだと考えられてきました。しかし、自国通貨を発行できる政府が、どうして税金によって財源を確保しなければならないのでしょうか? そんな必要はないのです。
とはいえ、無税にするとハイパーインフレになってしまう。税というものは、需要を縮小させて、インフレを抑制するために必要なのです。インフレを抑えたければ、投資や消費にかかる税を重くする。逆に、デフレから脱却したければ、投資減税や消費減税を行う。
つまり、税金とは、物価調整の手段なのです。財源確保の手段ではありません。「機能的財政論注2」は、税も経済全体を調整するための「機能」とみなすのです。
注2 機能的財政論・・・「財政は、財政収支が黒字か赤字かではなく、財政赤字の額の大きさでもなく、財政が経済においてどのように機能しているか(物価にどのような影響を与えるかなど)で判断すべきだ。これが『機能的財政論』なのです」(同著より)
税金が物価調整の手段であるということは、信用貨幣論によって、次のようにも説明できます。
貨幣は負債の一種である。貨幣は、貸出しによって創造され、返済によって消滅する。したがって、政府が負債を増やすことで、貨幣供給量は増えて、インフレに向かう。政府が増税によって負債を返済すれば、その分だけ貨幣が消え、貨幣供給量が減るから、デフレへと向かう。
こう考えると、実に単純な話でしょう。
ところが、平成の日本では、平成9(1997)年に消費増税と歳出抑制を行った結果、デフレに陥りました。平成26年にはデフレなのに消費増税を断行し、デフレ脱却を頓挫させました。そして、平成が終わり、新しい元号になる年に、またしても消費を増税しました。
消費増税を正当化する理由は、「財源の確保」です。しかし、そもそも、税は、財源を確保するための手段ではない。物価調整の手段です。
デフレ下の日本で必要なのは、投資減税や消費減税といった手段によって、物価を上げることなのです。
「財政赤字をこれ以上、増やすべきではない。政府の借金の返済の財源を確保するために、消費税の増税が不可欠だ」などという通説が、あたかも良識であるかのように、まかり通っています。しかし、これは、信用貨幣論からすれば、「デフレを悪化させて、国民をもっと苦しめたい」と言っているのに等しいのです。