「最悪の組み合わせ」を推し進めてきた悲しい現実
これに対して、消費税には、このような自動安定化の機能はありません。失業者であろうが赤字企業であろうが、消費をする以上は、税を課す。それが消費税です。
税収を確保したい財務健全化論者にとっては、不景気になると税収が激減する所得税や法人税よりも、不景気であろうが税を確実に徴収できる消費税のほうがいいのでしょう。だから、消費税は「安定財源」とある程度呼ばれるのです。
しかし、これまで説明してきた通り、日本は財政危機の状況にはないし、そもそも税は財源確保の手段ではない。デフレ下において、税収が減るのは何の問題もないどころか、むしろ税収を減らすべきなのです。
信用貨幣論をご理解いただいた読者にはお分かりだと思いますが、「税収が増える」ということは、その分、貨幣が消滅し、貨幣供給量が減って、デフレが悪化するということなのです。財政健全化論者は、貨幣が何かを分かっていないということですね。
さて、以上を踏まえた上で、平成の税制をあらためて振り返るならば、日本は、デフレの中にあって、所得税の累進度を弱めてきました。また、法人税率も下げてきました。その一方で、消費税を上げてきた。これは、デフレの時に行う税制としては、最悪の組み合わせです。
ちなみに、2017年度の法人企業統計によると、企業(金融・保険業を含む)の内部留保(現預金)は200兆円以上と、過去最高を記録しました。その一方で、消費は伸び悩み、デフレは続いています。
政府は、企業の巨額の内部留保を問題視しています。しかし、デフレなのに、消費税を増税して法人税を減税したのは、政府なのです。企業の内部留保の増大は、デフレ下で企業が経済合理的に行動した結果にすぎません。そして、デフレが続いているのは、企業のせいではなく、政府の経済政策のせいです。
内部留保が増えているのは、企業経営者が無能だからではありません。政府が無能だからなのです。
中野 剛志
評論家
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