格差拡大・経済成長鈍化…「消費税」の真の恐ろしさ
さて、消費税は、格差を拡大する効果をもつ税制です。というのも、低所得者ほど、収入に占める生活必需品の購入費の割合が高いので、高所得者よりも税負担率が高くなるからです。つまり、累進所得税とは逆に、消費税は「逆進的」なのです。
そして、格差の拡大は、経済成長を鈍化させる。ということは、消費税は、格差是正のみならず、経済成長の観点からも、よくない税制だということになります。
ここで、補足説明が必要かもしれません。
増税はインフレ対策であり、減税がデフレ対策である。大雑把に言えば、それで間違いないと思います。しかしながら、同じ減税であっても、需要を刺激せず、デフレ対策にはならないようなものもあります。
例えば、法人税の減税。企業の設備投資額の一定割合を税額控除する「投資減税」であれば、投資をしないと減税にならない。これは、投資需要を刺激する効果があるので、確かにデフレ対策となります。
しかし、単に法人の所得に対する税率を引き下げるような法人税減税の場合は、デフレ下においては、投資を促進するとは限りません。というのも、デフレとは、投資よりも貯蓄が有利となる経済状態です。したがって、法人税を減税されても、デフレである限り、企業は投資には及び腰ですから、かえって貯蓄(内部留保)を増やしてしまうでしょう。
ちなみに、所得税や法人税には、興味深い特徴があります。所得税は失業者など所得のない人には課税されません。法人税も、赤字企業には課税されない。
このため、景気が悪くなり、失業者や赤字企業が増えると、非課税になる人や企業が増えるので、税収が減ることになります。言い換えれば、経済全体で見れば、不景気になると、税負担が軽くなるということです。反対に、景気がいい時には、個人や企業の所得が増えるので、税収も増える。経済全体で見ると、税負担が重くなるということです。
所得税や法人税は、景気が悪い時には税負担が軽減されて不況対策の役割を果たす。逆に、景気がよくなると税負担が重くなり、景気の過熱を抑制する。こうして、景気の好不況の変動をならす。所得税や法人税には、このような巧妙な機能が内蔵されているのです。この機能は「自動安定化装置」と呼ばれています。