新型コロナより怖い、老人抹殺社会の現実が忍び寄ってきている。「老人はもう長生きしない。なぜなら、老人を殺してもおかしくない社会になっているからだ」――。老人ホームの裏の裏まで知り尽くす第一人者が明かす、驚愕の事実。超高齢化社会ニッポンが抱える問題点を明らかにする。本連載は小嶋勝利著『もはや老人はいらない!』(ビジネス社)から一部を抜粋、編集したものです。

「自分は好きで介護職員になったわけではない」

そのスキームは簡単です。失業者がハローワークに行くと、有償で職業訓練を受ける制度の説明を受けます。「給料をもらいながら介護実務が学べますよ」というスキームです。半年程度の訓練を経て、終了すると1級ヘルパーとなる資格を得ることができます。当時は介護実務を行なうには、2級ヘルパーの資格を10万円くらいの費用をかけて取得するのが一般的でした。その上位資格である1級ヘルパーの養成講座は有償だったのです。職業訓練生に課された条件は訓練終了後、一定期間介護事業所で仕事をしなければ、給付した給付金を返還しなさいというものでした。結果、多くの1級ヘルパーが介護現場に流れてきました。

 

私が働いていた老人ホームにも、多くの1級ヘルパーの有資格者が勤務していました。しかし彼らの多くは、常日頃から次のような話を公言していました。「自分は好きで介護職員になったわけではない。職業訓練に行けば賃金がもらえるから行っただけであり、今、勤務しているのも、一定期間、介護職員をやらないと、給付金を返さなければならなくなるからだ。こんな仕事、早く辞めてやる」と。

 

介護職員の質の問題は実は深刻であると主張していますが、ダメな介護職員を作った一番の原因は国がこの制度を導入したからだと思っています。昔からよく言います。勉強は自腹でやらなければ身につかないと。給付金目当てに介護職員になった者が、今の介護業界の職員の質の劣化の源流になったのではと思えてなりません。

 

だから介護業界は今、さまざまな悩みを抱えているのではないでしょうか? 国には、介護は単に作業なんだから、人であれば誰でもかまわないという考え方が根底にあるような気がしてなりません。たとえ資格制度を充実させたとしても、です。

 

小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

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