老人ホームの収入は介護報酬と月額利用料
老人ホーム経営の仕組みとは
ここで簡単に、老人ホームの経営の仕組みについてお話ししておきます。老人ホームの毎月の売上は大きく分けて2つあります。1つは月額利用料です。これはホテルコストとも言いますが、家賃や食事代のことです。
もう1つは介護保険報酬です。たとえば東京都内の一般的な介護付き老人ホームの場合、月額利用料金はおおむね25万円程度です。もちろん立地や居室の広さなどの要因でこの25万円が23万円にも28万円にもなりますが、ここでは25万円としておきます。
介護保険報酬は要介護度によって決まってきます。たとえば要介護2の場合、約20万円程度なので、先に記した25万円の月額利用料金と合わせて月額45万円が毎月の収入と言うことになります。厳密に申し上げると、この金額とは別に、提供するサービスや各ホームの能力により、さまざまな加算報酬が用意されているため、もう少し多くの収入を見込むことが可能です。
さらに、ここに入居金なるものが加わります。東京都内の場合、入居金はおおむね1000万円は下りませんから、仮に1000万円だとすると、この1000万円の60分の1の金額、16万円が45万円の月額売上に上乗せされます。60分の1とは、1000万円を60カ月で償却するという意味です。つまり月額売上の合計は要介護2の入居者が1人入居すると、61万円になります。なお入居金には初期償却という制度を採用しているホームが多いので、実際には入居金1000万円の60分の1という計算にはなりません。しかし入居者が支払っているという観点で考えた場合は、この計算方法でおおむね良いと考えています。
仮に60カ月間入居していた場合、毎月の1人当たりの売上は61万円となり、この数字をどう見るかですが、多くの場合は「多い」と見るようです。したがって多くの民間会社が「儲かる」と判断し、老人ホームの運営に参入しているというのが今の現状です。
それではコストはどうなっているのでしょうか。老人ホームにおけるコストの大半は人件費です。ちなみに介護付きの老人ホームの場合、介護保険法によって配置しなければならない職員数が決まっています。入居者3人に対し、常勤換算で計算した直接介護看護を担当する職員を1人以上配置しなければならないという規定です。入居者が60人いる老人ホームの場合、直接処遇職員数は常勤換算で20人ということになります。頭数ではなく、常勤換算であることに注意が必要です。