一般企業では既に始まっている時間外労働の上限規制が、2024年4月から医師にも適用される。勤務医の時間外労働時間を「原則、年間960時間までとする」とされているが、その実現は困難ではないかと指摘されている。その「医師の働き方改革」を実現した医師がいる。「現場のニーズに応え、仕事の流れを変えれば医師でも定時に帰宅できる」という。わずか2年半で、どのように医師の5時帰宅を可能にしたのか――、その舞台裏を明らかにする。

最後は、(3)本人の中長期的キャリアに対する考え、についてです。

 

ここでいう「キャリア」は、医師という職業についての将来像だけではなく、プライベートも含め、一個人としてどんなふうに生きていきたいか、といった広い意味での夢を含みます。「なぜ医師になろうと思ったのか」「糖尿病内科を選んだ理由は何か」「当院で働いた経験を、今後どのように生かしていきたいか」から始まり、出身地、どんなふうに育ってきて、これからどんなふうに生きていきたいかといったといったプライベートに関することも、差し支えない範囲で尋ねました。そうすることで、医局員がどのような人生設計を描いているのかを伺い知ることができたのです。

 

こういった質問を業務が一段落着いたような時に15~20分くらい、月1回程度随時行っていました。それ以外にも食堂で昼食を食べている時や、飲み会の席で、一言二言、さりげなく質問を投げかけてみて、本音を確かめることもありました。

面談では、「心理的安全性」を確保

質問をしていくにあたって、配慮しなければならないのは、面談相手に「心理的安全性」をきちんと持ってもらうことです。

 

「心理的安全性」を聴いたことのある方も多いとは思いますが、米国のGoogle社 のピープル アナリティクス チームが「効果的なチームの条件とは何か」という問いからリサーチ プロジェクトを開始して、「優れた上司の条件」の項目の一つとして掲げ、最近注目を集めている項目です。

https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/identify-dynamics-of-effective-teams/

 

「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと捉えられそうな可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だと信じられるか」といったことをいいます。常に「心理的安全性」のある良好な信頼関係を保てるように、日頃から「相手の話を聴くこと」を意識した丁寧なコミュニケーションをとることを心に留めてきました。

 

また、糖尿病内科を選ぶ若手医師は、「慢性疾患を抱える患者さんとコミュニケーションを取りながら、しっかりと寄り添っていきたい」という思いや、「仕事と家庭のバランスを取って働きたい」という気持ちが強い傾向にあるので、臨床に限らず幅広い視点で質問を投げかけることで、医局員たちの人生や人柄全般に興味を持っていることを示してきました。それによって、部下に親近感や安心感を持ってもらいやすくなると考えたからです。

 

ヒアリングの回数を重ねるうちに「心理的安全性」を確実に持ってもらえるようになっているという手応えを感じるようになりました。そうすることで、次第に医局員が率直に胸の内を語ってくれるようになり、我々の診療科が抱える課題についても非常に具体的な改善案を徐々に積極的に提案してくれるようになったのです。

 

こうして、本当の意味での片腕として、自分たちの長所を生かして、それまで以上にクオリティの高い働き方をしてくれるようにもなっていきました。

 

医局員達が上げてくれたフィードバックをもとに、私たちが最初に取り組んだ問題点は、次回ご紹介する「救急外来搬送患者を極力減らす糖尿病治療法の見直し」です。

 

「医師の働きかた改革」のポイント 
●医局員から直接、現状の問題点や要望を聞き、本音を探る
●医局員がどういった夢をもっているか、人生の方向性も含めても知っておく
●一対一の面談では、「とにかく相手の話を聴くこと」に徹し、「心理的安全性」の確保も

 

佐藤文彦
Basical Health産業医事務所 代表

 

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