ウイスキーの本場といったらどこを思い浮かべるだろうか? イギリス、アメリカ――それだけではない。今、日本のウイスキーの評価はうなぎのぼりで、世界中の賞を総なめにしている。だが、肝心の日本人はその事実を知らない。しかし、それではもったいない――ウイスキー評論家の土屋守氏はそう語る。ここでは、ウイスキーをもっと美味しく嗜むために、日本のウイスキーの歴史や豆知識など、「ジャパニーズウイスキー」の奥深い世界観を紹介する。本連載は、土屋守著書『ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー』(祥伝社)から一部を抜粋・編集したものです。

BLACK─50は、36歳のロッド・スチュワートを起用

今やめっきり使う機会が減ったテレホンカードの発売が開始された1982(昭和57)年、サントリーオールドとサントリーホワイトのCMはずいぶんと対照的でした。オールドのCMに登場するのは若く美しい男たち。引き締まった体をさらして砂浜を駆けます。添えられたコピーは「水がある、氷がある。」。夏にオールドの水割りをすすめる内容ですが、若者向けの作品に仕上がっているところに注目です。

 

一方、ホワイトのCMキャラクターを務めたのは、『仁義なき戦い』シリーズで東映を代表するスターとなっていた菅原文太(すがわらぶんた)でした。荒れる海や夜桜、手筒花火をバックにホワイトを飲み、「飲む時は、ただの人。のぅ」「社長さんも大臣も飲む時はただの人じゃけぇ。のう」「あんたも発展途上人」というナレーションが本人の声で入るというもの。オールドとはまるで違います。

 

また、ニッカウヰスキーのCMもユニークでした。ブラックニッカの若者向けブランド「BLACK─50」のCMキャラクターに起用されたのは、あのロッド・スチュワートです。スチュワートはスコットランド系イギリス人ということなので、ウイスキーのCMに適任だったといえるかもしれません。CM登場時、スチュワートは36歳。ヒョウ柄のピタピタのパンツを履き、サッカー場でゴールに向かってボールを蹴るだけなのに、驚くほどかっこよく見えました。

サントリーローヤルの傑作「世界の偉人」シリーズ

NHKの朝の連続テレビ小説『おしん』に、最終回で視聴率45.3%を叩き出したTBS系列の『積木(つみき)くずし─親と子の200日戦争─』と、ドラマがヒットを飛ばした1983年。歴代のサントリーローヤルのCMのなかでも傑作と名高い「世界の偉人」シリーズがはじまります。

 

第1弾は「ランボー」編。フランスの天才詩人、アルチュール・ランボーを題材にした作品なのですが、映像がなんとも摩訶不思議なのです。砂漠のなか、大道芸人と動物が隊列を組み、それぞれが芸を披露するというものでした。そこに、次のようなナレーションが流れます。

 

その男は一人で立っていた

十代で天才詩人

十代であふれる才能を放棄

二十代は放浪

そして砂漠の商人

永遠の詩人ランボー

あんな男ちょっといない

サントリーローヤル

 

製品カットは最後のおよそ5秒のみ。CMというよりは、ちょっとした芸術作品のようでした。全体に漂(ただよ)う幻想的な雰囲気が妙に印象に残っているという方もいるかもしれません。世界の偉人シリーズはその後、「ガウディ」「マーラー」と続きました。この年、国内のウイスキー消費量が最高を記録します。その量、約38万kl。ここをピークに、ウイスキー消費量は下降線をたどります。

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ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー

ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキー

土屋 守

祥伝社

世界のトップ層は今、ウイスキーを教養として押さえています。翻って日本人の多くは、自国のウイスキーの話さえ満足にできません。世界は日本のウイスキーに熱狂しているのに、です。そこで本書では、「日本人とウイスキー(誰…

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