本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

先行CI前月差+2.1で3ヵ月連続上昇、一致CI同+1.1と3ヵ月連続上昇

 

基調判断は8月分で「下げ止まり」に、これまでの「悪化」から上方修正

 

 

●8月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差+2.1と3ヵ月連続の上昇になった。速報値からデータが利用可能な9系列では、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列が前月差プラス寄与度に、最終需要財在庫率指数、消費者態度指数の2系列が前月差マイナス寄与度になった。

 

●8月分の一致CIは前月差+1.1と3ヵ月連続の上昇になった。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の6系列が前月差プラス寄与度、投資財出荷指数、有効求人倍率の2系列が前月差マイナス寄与度になった。

 

●一致CIの3ヵ月後方移動平均は前月差+2.74ポイント上昇し、16ヵ月ぶりの上昇になった。7ヵ月後方移動平均は前月差▲2.16ポイント下降し、22ヵ月連続の下降になった。

 

●最近の、一致CIを使った景気の基調判断をみると、19年8月分~20年7月分は「悪化」の判断だったが、20年8月分で一致CIの前月差がプラス、かつ一致CIの3ヵ月後方移動平均が単月で振幅目安の0.93を上回ったので、19年5月分~7月分以来13ヵ月ぶりの「下げ止まり」に上方修正された。

 

●「下げ止まり」から、事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数ヵ月にあった可能性が高いことを示す「上方への局面変化」に上方修正されるには、一致CI前月差が上昇、かつ一致CIの7ヵ月後方移動平均(前月差)の符号がプラスに変化し、プラス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差分以上振幅目安の+0.76以上になることが必要だ。過去の数字が不変だと仮定すると、9月分以降毎月一致CI前月差が+1.5の上昇が続けば、11月分で7ヵ月後方移動平均の前月差が+0.77となり、「上方への局面変化」の条件を満たすことになる。

 

 

●8月分の先行DIは100.0%と2ヵ月連続、景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数、鉱工業生産財在庫率指数、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの全系列がプラス符号になった。

 

●8月分の一致DIは75.0%と2ヵ月連続、景気判断の分岐点の50%を上回った。速報値からデータが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の6系列がプラス符号に、投資財出荷指数、有効求人倍率の2系列がマイナス符号になった。

 

●10月26日発表予定の8月分景気動向指数・改訂値では、先行CIに新たに実質機械受注(製造業)が加わる。機械受注の発表日は10月12日である。また在庫率関連データが10月14日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●8月分景気動向指数・改訂値で、一致CIには所定外労働時間指数が新たに加わる。8月分速報値の発表日は10月9日、確報値の発表日は10月23日で、26日発表の景気動向指数・改訂値では確報値が使われる。生産指数関連データが10月14日発表の確報値段階で、また商業動態統計関連データが10月15日発表の確報値段階でどのようにリバイスされるかが注目される。

 

●9月分の先行CIの採用系列で速報値からデータが利用可能な9系列中、現時点で数値が判明しているのは、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列である。全系列が前月差プラスである。

 

●また、9月分の先行DIでは、数値が判明している消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列で、全系列がプラス符号になることが判明している。9月分速報値段階の先行DIは44.4%以上100.0%以下になることが確定している。
 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2020年8月分景気動向指数(速報値)』を参照)。

 

(2020年10月7日)

 

宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト
 

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